信号機なくとも鳥居あり

7月21日(水)

  椰子の木と並んで、青空に映える鳥居――。サンパウロ市から北西に650キロ離れたパウメイラ・オエステ市。牧畜で知られる人口約1万人のこの町にある小さなプラッサに、一際人目を引く小さな鳥居がある。
 信号機が1つもなく、カッカッカッと蹄を鳴らす馬車の音が、町全体に響き渡るような小さな町に住む日系人はわずか300人足らず。かつては綿や米栽培に従事してきた人がほとんどだ。町の発展に大きく寄与した日系の足跡を、目に見える形で残そうと、入植40周年を迎えた1992年に、鳥居や灯篭を建設。非日系にも「ジャルジン・ジャポネス」の名で親しまれている。
 発起人の1人で、現地日本人会で書記を務めていた田中義行さん(86)が、建設を担当した。鳥居のデザインは、故郷の広島県の名勝地として知られる宮島に基づく。「日本人の存在感を見せないと寂しいじゃろ」と田中さん。
 高さ約1メートルと、リベルダーデやレジストロの鳥居には及ばないが、込められた熱い想いは負けていない。      (記)