日本語学習者約2万人=5年ぶり調査=18%増=ブラジルは世界第10位=国際交流基金調べ=アニメ、漫画人気が後押し

7月24日(土)

  ブラジルの日本語学習者が約18%も増加していることが、五年ぶりに実施された国際交流基金の「2003年日本語教育機関調査」により分った。二十一日午後、同基金のサンパウロ日本文化センターで記者会見が行なわれ、世界全体では一二七カ国に二三五万人の学習者がおり、前回調査よりも12%増加したことが発表された。アニメやテレビゲームなどの日本文化への興味が広がったことが、学習動機に結び付き、今回の増加の原因となったと同基金では分析している。
【世界の中のブラジル】
 この調査は五年ごとに行われるもので、今回は全世界の学校など約二万四千機関を対象に行われ、82・7%にあたる二万七七機関から回答を得た。その結果、日本以外で日本語を学んでいる人は一二七カ国・地域で約二三五万人(12・1%増)に上ることが分った。また、教師数は三万三一二四人で、前回よりも20%近く増加した。
 ブラジルの学習者は一万九七四四人で、世界第十位を誇るが、割合からすれば0・84%と1%にも満たない。教師数では全世界の3・4%を占める。
 学習者数トップは韓国の八九万人で全体の四割、二番目が中国(前回三位)で三九万人、三位はオーストラリア(前回二位)の三八万人だった。四位は米国、五位は台湾となっており、学習者の六割が東アジア、九割がアジア・大洋州に集中している。
 ブラジルでは学習者の76%が日本語学校で学んでおり、政府公認校や大学は残り24%に過ぎない。ところが、世界では学習者の64・8%は小中学校などの政府公認校、約二割が大学、残りのわずか1割が日本語学校で学んでいるに過ぎない。
 日本語学習の目的は、「日本文化に対する興味」「日本語を使ってコミュニケーションしたいという欲求」「日本語という言語そのものへの興味」の三つが主なもの。その他、「就職」「留学」「受験」なども出ている。今回のデータにはないが、ブラジルでは「父母の希望」「継承語」などの目的が多いのではと予測される。
 ブラジルでは、日本人移民が子孫に日本語を伝えるために日本語学校を作ったが、世界の大半はそうではなかった。ブラジルでは日語教師も生徒の大半も日系人が中心だが、世界においては非日系が大半を占める。ブラジルの日本語教育は特殊な状態にある。
【ブラジル国内動向】
 ブラジル国内における一九九三年の学習者は一万八三七二人で、九八年には一万六六七八人と減少し、日系子弟を中心とした学習者は減少傾向にあると分析されていた。
 ところが、今回の〇三年には一万九七四四人と二割近く増加した。さらに日本語を教える公立校などの教育機関が二十五校から五十五校に倍増。
 吉井弘同所長は「学習者減少傾向が底打ちしたことが分った」と分析。「前回の調査時に協力してくれた多くの日本語学校は、今回は休校・廃校になっていたが、それ以上に新しく開校しており、ブラジルの日本語教育は力強さを見せている」と評価した。
 教師数では十年前の八六八人から、八七二人、今回の一一二六人へ。うち日本語学校などの「学校教育以外」で七九六人から九九六人、「学校教育」では七六人から一三〇人に増えた。
 前回調査では「学校教育」は激増していたが日本語学校生徒が減少していた。今回は両方が増加していることから、同基金では「均整のとれた増加が今回の特徴」としている。
 ブラジル日本語センターの谷広海理事長は「農村部の日本語学校の数が減る以上に、都市部の学校が増えている。それが生徒増につながったのでは。心強い数字が出てきたことを、関係者の皆さんとともに喜びたい」と語った。
 一九八〇年代初め頃は過去最大の約二万三千人いたが、それが九四年頃には一万二千人ぐらいに激減したと、サンパウロ人文科学研究所元所長の宮尾進さんは同所の調査結果から述べた。九〇年代初めまでは学習者の大半が日系子弟だったが、二世である親自体が日本語を使わない世代に交代する中で、三世である学習者に学習意欲が減退し、減少する傾向に歯止めがかからないという危惧が抱かれていた。
 「当時は、日系社会の日本語はまもなく滅びるだろう、という結論でした」と宮尾さんは説明する。その後、漫画、アニメなど日本文化ブームが起きて非日系学習者が増加してきており、「ようやくブラジルも世界なみに。この調子で学習者が増えれば非常に喜ばしい」と結んだ。
 大志万学院の川村真由美校長は「増加する非日系学習者のニーズに応えるために、教師が再勉強することが重要な時代」とコメント。サンパウロ市最大の日本語教育機関であるアリアンサの西川悦治副会長は「全体で新入生徒に学習動機アンケートを実施するなどすれば、より興味深い数字が出るのでは」と提言した。
 同基金では、ブラジルのデータをより深く分析することも検討している。