イタペチ=観光農村化計画を開始=他地区のモデルケースに=取れたて果物=美味しい空気=〃武器〃に

8月6日(金)

  サンパウロ市近郊のモジ・ダス・クルーゼス市にあるイタペチ日本人会(大浦格会長)とSEBRAE(零細・小企業支援サービス機関)共催の「イタペチ農村観光プロジェクト」の説明会が、四日午後七時三十分から同日本人会館で行われた。蘭や柿などのブラジル有数の生産である同地区の農園を巡る観光コースを整備し、日本人会館を観光客受け入れ拠点にする計画。説明会には地元住民を中心に六十人が参加し、熱心に聞入った。
 モジ市役所観光課、CATI(州食料配給局)とSENAR(モジ農村組合)が後援している。
 サンパウロ市から五十キロ、車で四十分の近距離にある、イタペチ山脈に囲まれた風光明媚な土地。大浦会長は「こんなにサンパウロから近いのに空気もおいしいし、田舎でのんびりして、ストレスをとるのに最適。近くには原生林もあり、運がよければ猿やトゥカーノなんかも観察できる。都会で食べるのとは一味違う、取れたての柿や桃などを食べられる」と述べた。
 五月の柿・花祭りや七月のスキヤキ祭りで知られる同地を、農村観光地として発展させるプロジェクトが、五年前に日本人会の会員から持ち上がり、委員会を立ちあげた。これは同地区コミュニティー全体の活性化、雇用や収入の増大をねらっている。
 十人の委員が毎週のように会議を開いて、来年一月からの観光客受け入れを目標にがんばっている。具体的には、同地区に散らばる農園を整備して観光コースに編成、さらに日本人会館に観光案内所や果物・野菜の直売所、レストランなどを設置するものだ。案内係の育成や観光案内書の作成、道路案内標識の設置や道路整備を年内に終了する予定を立てている。
 SEBRAEモジ地区役員のエメルソン・モラエスさんは「隣のアルジャーやグァラレマには工場がどんどん立って自然破壊が広がっており、今すぐ真剣に環境問題に取り組まなければ取り返しがつかなくなる。しかし、このプロジェクトが成功すれば自然環境が保存されるうえに、地域の活性化にも役立つ。うまく成功させて、他の地区へも同じプロジェクトを拡大していきたい」と計画の意義を説く。
 このプロジェクトをモデルケースとし、同市では市全域を観光都市として、開発させる計画も持つ。主として大サンパウロ圏、パライバ渓谷地方やカンピーナス地方からの観光客をねらっている。
 委員会メンバーの石川ルイスさんは「SEBRAEと市観光課からバックアップしてもらって、ようやくここまでこぎつけた。家族客や団体客がイタペチで一日ゆっくり観光してもらって、満足して帰ってもらうのが目標」と抱負を語った。
 また、トミヤマ・オリンピオ同市議は「九〇年代から芳賀七郎さんが盛んに述べていたような、農村で新鮮な野菜や果物を直売したり、レストランや土産物店などを開いて地元の雇用や収入を増やして、若者の農村離れを防ぐアイデアが実りつつある。これが成功すれば他地域でも同じようにプロジェクトを立ちあげたい」と語った。