コラム 樹海

 さきごろ三重、奈良、和歌山の三県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界文化遺産への登録が決まった▼ところが、めでたい、とばかり喜んではいられない。霊場の一つで、修験道の道場である大峰山の女人禁制を巡って、性別の不平等をなくそうとする団体と信徒との間で激しい議論があるそうだ。成り行きによっては、世界遺産の返上も辞さない、というからたいへんである▼隣の大阪府でも、毎年のように大相撲大阪場所のおり、女性知事が土俵上で優勝力士を表彰したい、と要請、これに対して元締めの協会が、伝統に反するからダメです、と応じ、結局、女性禁制が維持され、差別は直らない▼ブラジルの私たちが住む周囲では、幸いというべきか、こういう議論になる素地がないので、鬱陶しくなくていい▼土台、日系人の移民社会は、女性の力がなかったならば、成り立たなかった。「移民妻」という言葉を見たり、聞いたりすると、開拓時代、農作業と家事・育児の両方を受け持った忍耐力に満ちた女性を思い浮かべる。時を経て、男も女も平等に高齢化したが、先に降参したのは、どうやら男である▼先日の日本祭りの「食」と「芸能」の紹介の場での、活力あふれる、あの女性たちの活躍ぶり!敵わないのだ。女性禁制とか差別などあり得ようはずがなく、仮に議論が生じたら、禁制論者はそれこそ吹っ飛ばされるだろう▼さて、霊場での妥協案には、女性が登れる、特別期間の設置などがある。如何なりますか。(神)

04/08/06