デカセギ女性たちのために=産科医、日本でポ語の本=「妊娠から出産まで」助言=日伯間の違いを書く=妊婦、戸惑わないように

8月19日(木)

 海外での出産には、多くの女性が不安を持つだろう。約二十七万人のブラジル人が居住する日本には、ポルトガル語で書かれたガイドは、ほとんどないのが現状だ。言語や習慣の違いから、診察にまごついてしてまう人もいる。産婦人科医の佐藤クレーベルさん(二世、30)がこのほど、『Guia da Gravidez(邦題・妊娠から出産まで─健康に過ごすためのアドバイス)』(インター・ナショナルプレス社)を上梓した。
 佐藤さんは二〇〇二年~〇三年、慶応・順天堂大学、川崎市立病院で研修した。妊娠中のブラジル人女性が、日本の習慣などを知らず困っている姿を少なからずみた。通訳に入ることも、ちょくちょくあったという。
 〇一年七月から月に二~三回、インターナショナルプレス紙に「Mulher Saudavel」と題したコラムを発表。読者からの反響がかなり大きく、妊娠・出産に関わる記事を書籍としてまとめる企画が持ち上がった。
 主治医の説明が理解出来ず、コミュニケーションが取れないというのが最大の問題だ。「日伯間の違いに重きを置いて、書きました」
 ブラジルでは、帝王切開を望む女性が多い。日本は自然分娩が基本で、メスを入れるのは最後の手段だという。日本語能力が不十分のため、ブラジル人妊婦が本人の意思を伝えられないことも少なくない。
 「こちらでは、医者と患者が話し合って、出産日を決めてしまいます。どちらが正しいとか間違っているというのではなく、文化の違いだと思います」。
 ほかにも、両国の相違はたくさんある。例えば、帝王切開のときのメスの入れ方。日本では縦だが、ブラジルでは横。「ブラジル人女性は美容に気を使う。出産後、ビキニ姿で手術の跡がみえるのを特に嫌います」と、佐藤さんは話す。
 さらに日本では、上半身と下半身をカーテンで仕切ってしまう。顔を見て会話することが出来ないため、ブラジル人女性は不安になるという。ある大学病院では、学生など十人ほどが患者の下半身を見つめていたことも。
 書籍には、日伯の習慣の違いから、医者のかかり方、妊娠中の注意、会話集などが盛りだくさんの内容になっている。日本のみの販売で、定価は二千八百五十七円。