コラム 樹海

 食べ物も無く飲む水も無い。あまりの空腹に堪り兼ねて庭に咲く花びらを口にする子も。喉の渇きはもっと辛く苦しい。人質となったある児童は「おしっこ」を飲み苦痛を凌いだ。それでも武装集団は飲料水と食料の差し入れを拒否し、爆弾の起爆装置に足を掛けて年端も行かない子供らを監視し「チェチェンからの露軍撤退」を要求し一歩も引かない▼露南部の学校占拠テロはチェチェンの独立を目指す派の武装グループによるものと見られるが、いたけない子らを人質に取っての脅迫と要求など許されるものではない。どんなに崇高な主張や政治目的であっても、それを実現する手段や方法を誤るととんでもない不幸を招く。プーチン大統領は冷たいほどに「理の人」だし、テロの求めに安易に応ずることはまずない。二〇〇二年に起きたモスクワの劇場テロでの強攻策が、これを証明している▼そんな事を思うと、特殊部隊の突入による武装勢力の制圧はやむを得ないのではないか。死者は百五十人以上だとされるし痛ましい幕引きになったのは残念ながら、テロの言い分に従っていれば、同じような事件の繰り返しの恐れもある。プーチン大統領は「取引には一切応じない」と毅然たる態度でテロに立ち向かったのは評価していい▼「人命は地球より重い」のは事実ながら、現実の問題を解決するには非情さもいる。チェチェン紛争は決着したように見えるけれども、独立の動きは今も根強い。だが、テロとの戦いに安易な妥協は許されなく厳しく対処するしかあるまい。  (遯)

  04/09/04