コラム 樹海

 小泉純一郎首相が来伯、足掛け三日の滞在である。分刻みの日程で、ブラジルと在伯日系人社会をゆっくり見ていって下さい、とは言えない忙しさだ▼ルーラ大統領との伯日首脳会談では、国連安保理改革、エネルギー・食糧分野の協力、貿易の協調、人的交流の拡大―などが話し合われるという▼どちらかといえば、伯日関係は三十年前のような緊密になろう、といった雰囲気ではない。偶然でなく、両国とも中国に目が向いているし、ブラジルにとっても、密にしかも大規模に付き合いたい国は、同じ地球の反対側の国ではあるが、日本ではない。こうした状況にあって、どの程度突っ込んだ話し合いができるか、わからないが、せっかくのトップ会談なので具体的な成果がほしい▼日系関係の関心事は、海外最大の、移民から発した社会がここに存在していることを、首相に直に知ってほしいことだ。すでに日本人一世は活性を失っているが、四年後に百周年を迎える社会は、ブラジル人として生まれた子孫たちを構成員として、ますます広がりを見せる▼そして、かれら日系ブラジル人が、渡ってきた父祖の数よりはるかに多く、需要に応じて日本へ就労に行っている。かれらにとって父祖の国は、生まれ育った国とは全く異質だった。いま、人間をつくる上でもっとも大切な「教育」の面が、不本意ながら十分には程遠い。困窮しているといっていい▼首脳会談では、人的交流にからめて、この問題の打開を話題にしていただきたい。(神)

04/09/15