「今、命の輝きの最後にいる=どんな困難にも挫けないで」=シニアの安達さん訴え=老人週間、参加者ら感激=和井会長「もう10年いて下さい」

10月1日(金)

 二人の命を受け継いで――。二十九日文協講堂で開かれた「老人週間」で、ブラジル老人クラブ連合会で活動中の安達正子JICAシニア・ボランティアは「いのち輝いて生きる~人生の悲しみを乗り越えて~」と題した基調講演を行なった。山梨県の施設での老人介護、家族を襲った不幸など自身の体験を、ゆっくりしっかりと観客に語りかけるように話しながら、「どんな困難にも挫けないで生き続ける」ことを訴えた。
 介護福祉士の資格を持つ安達さんは、山梨県の介護老人保健施設「ノイエス」で働いているうちに出会った老人たちのことをスライドを交えながら紹介。ある老人からは「私もがんばってるから、あんたもがんばれ」と励まされたという。
 私の家族のことを話させて下さい、と前置きした後、自身の家族について話し始めた。安達さんの家族を突然の不幸が襲ったのは約七年前。六年間、心の病と闘い続けた長男が二十四歳の若さで自ら命を絶った。「家族の希望の星」を失った安達さんは大変な衝撃を受け、打ちのめされた。そのわずか二十日後、今度は心の支えだった牧師の夫を心臓発作で失った。
 二人の家族をほぼ同時に失ってしまった安達さんは、一人旅に出る。旅先の四国で、二人のことを思い返しながら、いつしか二人の命は自身の心のなかに生き続ける、と感じるようになったという。「私が輝くとき彼らの命も輝く。私が生き生きとするとき、彼らの命も生き生きと生きる」。
 その後「ノイエス」で仕事を開始。たくさんの老人との出会いに励まされ、娘二人と支え合いながら、絶望的に悲しかった気持ちを回復させてきた。
 様々な経験を経てブラジルで老人介護に携わるようになった安達さん。「お年寄りは命の輝きの最後にいます。最後の輝きの時に、こういう人と出会えて良かったと思ってもらえるようになりたい。みなさんにとても元気をいただき、励ましてもらっています」と講演を締め括った。
 来年八十歳を迎える西村愛子さんは「とてもいい人だと思う。家族を大事にしているのが印象的」と話した。また、渡辺美智子さんと三部キエさんは「心がこもっており、全てが素晴らしい、立派な方。涙を流しながら聞きました」と絶賛した。
 ステージに上がった和井武一援協会長も「残り一年と言わず十年くらい居てほしい。こういう人にもっと来てもらいたい」などと興奮を隠しきれない様子で話した。