和太鼓の練習場12月完成=イグアスー移住地 伝統文化の発信〃基地〃に=太鼓生産でも高い評価

10月30日(土)

 パラグァイのイグアスー移住地で、和太鼓練習場の建設が進んでいる。壁は二重で防音装置付きという本格的な設計。面積は十×十五メートル、高さ五メートルで、十二月初旬の完成を目指している。
 同移住地には二〇〇二年六月に東京から澤崎琢磨・雄幾兄弟が移住してきて、太鼓の指導と生産にも取り組んでいる。今では中高生が所属する「鼓太郎」(こたろう)、青年部の「鼓舞音」(こぶね)、大人の「鼓組」(つづみぐみ)という三つのグループが組織され、練習に励んでいる。
 練習場は、兄弟の父親である澤崎眞彦・東京芸術大学教授が、移住地の伝統芸能振興のために寄贈したもので、太鼓だけでなく、舞踊や音楽などの練習にも活用されるという。
 和太鼓の生産を行っているのはイグアスー太鼓工房で、〇三年六月に第一号ができて(本紙・〇三年十一月二十六日報道)以来、次々と生産が進んでいる。棟梁は石井吉信さん(70、山形県出身)だ。すでに、アルゼンチンに一個、ブラジルに五個、日本に三個を販売および一部贈呈している。日本からは追加三個の注文が届いているという。
 太い幹からは大と小の親子太鼓を作ることができる。材料を削るのは手作業で手間かかかる(石井棟梁談)ため、大量生産はできない。今年はすでに、澤崎兄弟と太鼓グループがサンパウロ近郊でのアルジャー花祭り、サンタ・カタリーナ州サン・ジョアキン移住地、パラー州ベレンでの入植七十五周年記念行事、南マット・グロッソ州ドウラードス移住地などで公演や指導を行い、高い評価を受けている。パ国内では数多く公演を行い好評だ。
 〇五年一月にはアルゼンチンのラプラタ市から公演の招待を受けている。また、去る十月十三日に国連(広報局と思われる)が太鼓工房を取材した折りに、十一月中旬、国連が首都アスンシオンで主催する国際会議での特別公演の要望を受けたという。
 澤崎兄弟は、日本伝統芸能の大御所の一人と言われている父親(東京芸大教授)より幼少の頃から太鼓や笛や鉦などの特訓を受けて育ってきたため、プロ級の演奏者としての定評を得ている。
 他方、イグアスー産の和太鼓は奥深い音色を含め、日本産と遜色がない、と日本の太鼓作り専門家のお墨つきを得ている(本紙・〇四年九月二日報道)。防音練習場の建設により、大豆「オーロラ」の里として知られる移住地が〃日本伝統文化の里〃にも向かって一歩前進するようだ。