各移民系社会が努力を=サンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会 連載(上)=文化継承は危機的状況=子ども時の教育こそ重要=「我々は〃根っこ〃を失いつつある」

12月2日(木)

 各コミュニティがしっかりと文化継承すべし――。
サンパウロ州議会外国文化コミュニティ協議会(CONSCRE)主催の多文化教育セミナーが、十一月二十五日午前九時からサンパウロ市のSENACサンパウロで開催され約百人が参加した。なかでも、日系女性四世代の歴史を描いた映画『GAIJIN2』製作中の山崎千津薫監督(三世)は、「私は多くのものを祖母や母親から受け継いできた。同様に、自分の子どもに対する義務としてこの映画を作っている」などと講演し、会場から大きな拍手を受けた。

 開幕にあたり、今セミナーの総コーディネータのアウベルト・ミケビッチさんは、三年前にこの評議会が議会内に設置された経緯を紹介し、「各々の移民コミュニティのRaizes(文化的根っこ)を尊重しながら、新しい市民を形成し、より良い共生状態を作る」ことが設立目的であると述べた。
 「Raizesを維持、継続するには、子どもの時の教育が重要。州立学校の授業の一環として、自分のRaizesは何かを見つめ直すプログラムをできないかという検討をしている」ことを明らかにした。
 続いて、クラウジア・コスチンサンパウロ州文化局長は「我々の国はRaizesを失いつつあり、出自という極めて貴重な文化的価値を無くす危機を迎えている」と問題提起し、各コミュニティがより一層、若い世代への文化伝承に努力するよう呼びかけた。
 同局長は、異なる文化を抱えた人たちが平和裏に共生できる社会を模索することの重要性を訴えた。父親がルーマニア系、母親がハンガリー系の長官は、自らの幼少時代、二つのコミュニティで別々の歴史や生活習慣を教えられ、世の中には多くの価値観が存在することを学び取ったと述べた。
 「自らの文化が数千年の歴史を持つからと言って、そうでない新しい文化をけなす理由にはならない。異なる文化を持っていることを相互に尊重し、それを認め合う中で共生する術を模索することが本当の文化的デザフィオ(闘い)だ」。
 さらに、このような価値観を社会全体に醸成するためには、子ども時代からの教育は重要であるが、「多くの家庭では経済的な理由から、そのような文化出自を伝える環境がない。州立学校の週末教室にそのような無料教育を設けるよう、協議会が州政府に働きかけることも可能では」と提言した。
 「多文化教育への働きかけこそが協議会の役割。全ての文化を尊重することは、ブラジルの文化的多様性をより豊かにし、国の発展に貢献するものだ」と結論した。
 それを受けて、レスカラ・トゥーマ同協議会会長は、「日本が中国と戦争しても、ドイツ人がユダヤ人を迫害しても、ブラジル国内ではそれに類することは起きなかった。多文化が共生していることは、我々が世界に誇れる点だ。祖先の文化を伝承することはブラジリダーデ(ブラジル人性)をおとしめるものではない」と熱く語った。
        つづく