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神楽の衣装贈られる=ブラジルの保存会に

12月22日(水)

 かねてよりブラジル広島神楽保存会(細川晃央会長)に、母県から寄贈されることが決まっていた神楽の衣装や道具の目録が、細川会長に贈られた。安芸高田市(児玉更太郎市長)と同市の美土里神楽連合会(久保良雄会長)、高宮神楽連絡協議会(塚本近会長)が費用を出しあって、新品の衣装など八点を、また福山荒神神楽団が中古品のお面など十六点を寄贈する。
 新しく作られたのは、「臣」と「鬼」の金襴の衣装各一組(打掛、タマヌギ片切りセット、袴)、蛇の面、蛇の胴で、総額百三十万円。中古品十六点は、お面(鬼、猿、侍、若者、ひょっとこ、翁、中年男)、衣装(前垂れ、鉢巻、陣羽織)、刀など。
 先月八日、広島市で行なわれた筒井數三広島県日伯友好協会会長への「リオ・ブランコ国家勲章授与・祝賀会」に、大西博巳広島県人会会長と細川会長も出席。式典中、両氏に目録が手渡された。寄贈品の衣装と蛇の面・胴は、九月にすでに仕上がっており、会場の一角に展示されていた。
 寄贈品が手元に届くのは来年。現在訪日中の同県人会事務局長が、来年一月帰国する際に衣装を運び、刀などは、来年三月に来伯する指導員が運ぶことになっている。
 同保存会は一九六九年、神楽好きの西本茂さん(初代会長)、井原仁一さん(二代目会長)らを中心に結成された。衣装、太鼓、舞台など全て手作り。最盛期には年二十回以上も公演した。「当時は、心を満たすような娯楽や余興があまりなく、神楽を舞っていると故郷へ帰ったような気持ちになった。気の合うもの同士、同じ目的で無から有を生み出すのが楽しかった」。懐かしそうに振り返る細川会長の顔には自然と笑みがこぼれる。
 現在は、「古典芸能を世界へ広め、同じ血を引く三、四、五世へ伝えたい。どこの国にもあるものではない。自分の郷土にそういう芸能があるのだから、続けていきたい」と、次世代への継承に力を注ぐ。
 若者たちは、汗だくになるまで舞を続けたがる。「おじいさんと違って、エネルギーが溢れてしょうがないんだろうね」と、頼もしそうだ。

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