コラム 樹海

  昨年末、ロンドリーナでパラナ詩吟祭りが催された。民謡団体の友情出演もあり、祭り名称をパラナ詩吟・民謡祭りと言う人もいた。詩吟だけでは舞台が盛り上がらないだろうから、と応援したのだ。応援できるほど民謡愛好者たちに潜在力がある。パラナの「うたファン」は歌謡、民謡は依然人気を保っている、とみている▼一方、一つの県人会だけでも民謡コンクールができる。昨年、山形県人会が第一回山形民謡コンクールを企画し、成功させた。山形民謡の伝承をねらい、山形県自体をアピールするとの趣旨だった。六十四人の申し込みがあり、五十六人が実際に参加した▼参加者の年齢層をみると、高年層のほうが多かったが、上位入賞者のなかに名前がカタカナ表記、つまり日系ブラジル人が含まれていた。高齢でもブラジル人が日本民謡を唄っているのであり、一世が絶えても唄は伝えられていく可能性を示していた。民謡〃専門〃団体による大会では、出場者年齢層が下がり、二世、三世に歌い手がしっかりと育っていることがわかる▼濃縮されたような短い歌詞、高い音域の旋律(ふし)が多い日本民謡。日系であっても、ブラジル人には、好かれそうもない、と想像されるのだが、そうではない。短詩の微妙な意味を完全に理解できなくても、身体の中の(日本人の)血が、受け付けて取り込んでしまうのだろう▼非日系人が動きがある吟剣詩舞を好むのとは、明らかに異なる。民謡後継者を大事に育てたいものだ。 (神)

05/1/7