インターネット電話で会話=「オイ!パパイ」=サンパウロ市で留守家族懇親会=JFE主催

1月18日(火)

 【既報関連】日系人専門の人材派遣会社「TSA」(神奈川県川崎市)で働く在日日系人の留守家族懇親会が十五、六の二日間にわたってサンパウロ市の松原ホテルで開かれた。出席者はインターネット・テレビ電話を利用して日本にいる家族との会話を楽しんだ。「オイ!パパイ」と、コンピューター画面に写った父親の顔を見るなり声を張り上げる子供や、久しぶりに息子の顔を見て涙を浮かべる女性の姿も見られた。出席者は二日間で約百七十人に上った。
 国義真功さん(68)、千代さん(66)夫妻は息子の真一さん(45)との会話を終え、「いい会社で働いていて、私たちはとても安心です。息子自身も会社を気に入っているようです」と話した。現在、真一さんは日本に帰化し同社の人事課で働いている。
 懇親会には以前TSAで働いていたOBたちも参加した。昨年の十二月に帰国したばかりの菅原正さん(56)は、「日本人の社員によくしてもらい、何のプレッシャーも感じることなく働くことができた」と振り返る。
 主催した請負業JFEウイングの保田博通取締役は、「大成功です。安心して働いて頂けるということを分かって貰えたと思います。別な企画も加えて今後も続けて行きたい」と手ごたえを語った。
 一年ぶり二回目の懇親会だが、関係者は「今回は泣く人がほとんどいませんね。国際電話より格安のインターネット・テレビ電話がデカセギ者の間で普及し、顔を見ながら話すのは普通になったためでは」とみる。
 TSA関連企業「BIG ROAD」の保田大助取締役もこれを踏まえ、「次回は電話以外のイベントも考えないといけないですね」
 だが、インターネット電・テレビ話のない留守家族もいた。
 「四カ月ぶりに兄の顔を見ます。寂しいんじゃないだろうかと心配です」という江田順子さん(48)。
 兄のタクジさん(50)は昨年九月、初めてデカセギに行った。タクジさんは父親や江田さんと一緒に自動車の販売業を営んでいたが、三十年以上続いた会社も不況で十年前に倒産。以来、いろんな仕事をやってきたが、どれも上手くいかなかった。
 その間に父親が半身不随に。順子さんは看病に追われ、タクジさんは生活のためにデカセギに行かざるを得なくなった。江田さんは離婚しているため、タクジさんは息子の父親代わりでもあった。「本当は一緒にいたいけど、それじゃ食べていけない」と嘆く。
 それでもタクジさんの帰国後、「また一家で新事業を立ちあげたい」と江田さんは語った。