コラム オーリャ!

 手帳を使い切った例がない。毎年四、五月以降のページは真っ白だ。
 カレンダーもろくに見ないので、曜日の確認はバールの日替わりメニューが頼りだ。フェイジョアーダなら水曜、フィレ・デ・ペイシェなら金曜といった具合に。
 そんなわたしだが、今年も懲りずに手帳を買おうと思った。往年のスパイ映画で刑事や諜報員が使っていたような懐中手帳が理想だ。背広の内ポケットからさっと取り出す年季入りのやつだ。
 懐中。懐かしいその響きに導かれ、求め歩いたが、イメージ通りの品とは巡り会わなかった。なぜだろうと胸に手を当ててみれば、ない。カジュアルルック隆盛の世相に倣い、懐のあるような装いをしていないのだ。
 で、Tシャツ姿でも携帯できるようにと、最小版の「掌中」手帳を購った。今年こそは手垢で汚したいのだが。(大)

05/1/18