前代未聞の事務所開設=谷広海さん、文協会長選に出馬へ=1世実業家、必勝体制で

2月26日(土)

 文協会長選のために選挙事務所開設?! さすがに〃コロニアの総理〃を選ぶだけあって、準備も本格的だ。戦後移民の文協会長候補が、選挙事務所開きを三月四日に予定していることが、二十五日分った。その候補とは現在、ブラジル日本語センター理事長を務める谷広海さん(65、宮崎県出身)。「支援者に推されて出馬することに決めました」と胸中を語る。「開かれた文協に」を旗印に、一世会員を中心とした勢力の結集を呼びかける。波乱の会長選挙は、執行部、文協を考える会、横田パウロさん、谷さんの、三つ巴、あるいは四つ巴の様相を呈してきた。
 「文協どころかコロニア全体でも、会長選挙のために選挙事務所開設なんて聞いたことない。前代未聞だね」と、文協役員を十年以上務めた高橋信夫さんは半ばあきれたように言う。
 「今は、一世にとっては悲観的な状況。これを打開したいと思っている人たちから先週土曜日に出馬要請を受けました。いずれいろいろな会から支持表明がでるのではと期待しています」と谷さんは語る。
 サンパウロ市リベルダーデ区グローリア街279番の九階で、三月四日午後五時に事務所開きを予定している。
 「現在の上原体制ではいかがなものかという声がある。事務所を開いてスタッフを集めた後、公開討論会などを行い、文協のあるべき姿を問う、開かれた議論をしていきたい。いろいろな圧力もかかってくるが、支援者と共に屈しない。やる以上、勝つつもりで行きますよ」と勢いをみせる。
 谷さんは一九六四年に学生移住連盟の第三次派遣実習生として初来伯。一端帰国し、早稲田大学政経学部を卒業後に移住。以来、アラゴアス州都マセイオ市でパステラリア、シュラスカリア、装飾小物チェーン店(東北五州に展開)、ホテル経営などを経て現在はモーテル業。途中、アラゴアス連邦大学法学部を卒業し、弁護士資格を持つ。ブラジル盛和塾の代表世話人、ブラジル日本語センター理事長など。
 半月はサンパウロ市で、残りはマセイオで事業に専念するという生活を続ける。文協会長、祭典協会理事長をする場合には、サンパウロ市に常駐せざるをえない。そのへんを疑問視する声も聞こえる。また、日本語センター理事長職をどうするのか、と心配するむきもある。
 元文協役員の高橋信夫さんは「岩崎さん、上原さんの時は、会長のなり手がいなくて困った。今回のように意気込みのあるシャッパが三つもあることは、非常にけっこうなこと」と喜びつつも、「本来は、高等審議会あたりが、単一シャッパをまとめるべきだったのだろうが・・・」とも。高等審議会とは上原体制になってから設置された、有識者によって構成される理事会を支援する上級組織。
 INSS罰金問題、若手会員の参加促進、経営赤字を解消する取組み、百周年記念事業の総意問題との絡みなど、文協には課題が山積みだ。
 その創立五十周年の記念すべき年に、初めての複数シャッパという波乱が予想されている。百周年記念事業の「日伯総合センター」に関するゴタゴタが、百周年祭典協会理事長を兼務する可能性の高い文協会長選挙へ舞台を移して、改めてコロニアの民意を問う形になりそうだ。