コラム 樹海

 信者が十億人というカトリックの頂点に立つロ―マ法王ヨハネ・パウロ二世が死去した。初代法王の聖ペテロから数えて第264代目であり八十四歳でこの世の命を終えた。法王には伝統的にイタリア人がなることが多いのだが、455年ぶりにスラブ系としては初めての法王である。「旅する法王」や「空飛ぶ聖座」と呼ばれるほどに世界を狭しと行脚し信者などに平和の尊さを訴え続けた▼ここブラジルには3回も訪問し信者らの熱烈な歓迎を受けたし、日本の広島、長崎にも足を運び戦争の否定を語り人々に深い感銘を与えたのも記憶にとどめたい。法王になってから104回もの外遊を行い約130ヵ国をも訪問している。交通の発達があったにせよ、これだけ多くの国々を訪れたのはヨハネ・パウロ二世が初めてである。これだけ宗教と民衆との結び付きを強めた法王は歴史上なかったと見ていい▼宗教和解に尽力した功績も大きい。ユダヤ教との雪解けをもたらしバチカンとイスラエルは国交を樹立したし、仏教やイスラムなど異宗教との協調にも力を尽くした。この一方ではカトリックが正当としてきた過去の誤りを是正することにも熱心だった。地動説を唱え宗教裁判で有罪となったガリレロの名誉を回復しているし、十字軍の遠征にも否定的な見解を示し―南米の先住民に対する迫害についても謝罪している▼こうした歴史的な事実を見直す動きはとても難しいけれども、法皇が真実に向けて積極的だったの意味は大きい。共産党が嫌いで圧政を拒み抑圧された社会を否定する。人間の自由を最も重いものとし宗教の大切さをも説いたヨセフ・パウロ二世の考え方は、世が移り変わってもきっと人々に語り継がれるに違いないと信じたい。   (遯)

05/4/5