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台湾コロニア=〝周縁〟から〝中心〟を目指して=連載(2)=コチア市に如来寺=客家プラザ内にも寺〃入居〃

4月6日(水)

 「ご飯食べた?」。台湾人は挨拶代わりに、よくそんな言葉を交わすらしい。食事に対して貪欲な民族だと、一般に言われている。そこで「国際理解は、まず料理から」と思った。
 だが、台湾料理のレストランが中々見当たらない。台湾行政院新聞局の張永賢さん(サンパウロ市駐在員、38)も「前はいい店があったんだけど、閉めてしまいました」と郷土の味を恋しがる。
 十万人のコロニアが存在するのなら、台湾料理の店が結構出てきてもよさそうだが……。聞けば、移住者は飲食関係を敬遠。雑貨商に進出する傾向が強かったそうだ。
 「料理する仕事は重労働のわりに、収入は上がらない」と、あるポルキロ食堂経営者。一年三百六十五日、休日なしで働いているという。
 ではブラジル人が最も〃台湾〃に接している場所は、いったいどこなのだろうか?先日、コチア市の佛光山如来寺(ZU LAI)を訪れた。好天に恵まれた日曜日の午後だった。駐車場が、びっしりと自家用車で埋まっていた。
 ラテン・アメリカ最大の禅宗の寺──。マスコミに大々的に取り上げられたこともあり、既に観光地となっているようだ。見学者数は、月に一万人以上に上る。信心深い(?)ブラジル人にとって、宗教は有力なチャンネルになるのかもしれない。
 この日、仏事が催された。多くの非日系人が参加しており、台湾からきた僧侶に付いて読経していた。
 如来寺では、座禅や太極拳、中国語のレッスンなどが受けられる。ベジタリアンの食堂、喫茶店、仏像の展示室、庭園なども設置されており、二、三時間はゆっくり楽しめそうだ。周辺地域の学校に物品を寄贈するなど奉仕活動も忘れない。
 台湾系の仏教は一九七〇年ごろから、ブラジルで布教している。ちょうど母国で仏教が見直され、勢いが再び増してきたころだ。それ以前は、信仰を求めてカトリックに改宗してしまう移住者が少なくなかった。
 九二年に進出した如来寺を含めて、四つの宗派がサンパウロ市に拠点を持つ。同寺の関係者は「どちからと言えば、福建系(福ロウ系)が教会に入った。客家系は祖先から伝わる仏教を守った」と話す。
 その客家系が集中して居住しているのが、リベルダーデ界隈だ。非日系人の信者を増やすため、コチア市に敷地面積十六万平方メートルの大寺院を建築する計画を打ち出した時、移民一世の檀家から苦情が殺到した。
 「セントロから三十キロも離れているなんて、遠すぎる」
 寺のトップたちは、対応策に知恵を絞った。折衷案として客家プラザに入居。毎週日曜日に、無料バスを運行させることにした。
 「リベルダーデはやはり、移民の故郷のような場所ですから。強い要望を出したんですよ」と、檀家の一人。客家プラザは連絡事務所ではなく、れっきとした寺の機能を持ち、「修行などを行う」。
 先祖の源流と恩恵を銘記、その道徳規範に従って行動し家名を上げること。「慎終追遠」という。この客家精神が受け継がれる限り、寺の行く末も安泰だろう。檀家たちも「我々は事あるごとに、子供たちに仏教の教義を伝えています」と自信満々だ。
 台湾の本部はいずれ、寺の管理をブラジル側に委ねる考え。僧侶を育成するためのコースを開いており、二十人が修行中だ。酒や婚姻が禁止されているなど、戒律は厳しい。現地の僧侶誕生に、期待がかかる。
(つづく、古杉征己記者)

■台湾コロニア=〃周縁〃から〃中心〃を目指して=連載(1)=「台湾人要出頭天」=─台湾人として胸を張る─

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