コラム 樹海

 平成の《市町村》大合併時代といわれる。日本政府が積極的に推進しているものだ。地方自治体の諸経費をまとめて削減する、さまざまな経済効果を生み出すようにする、などをねらっているものと思われる。島崎藤村が生まれたところが信州だったのに岐阜県になったりして、合併にともない人々の「地縁」は薄れていくのが普通だ。ところが、そうでないところがある▼沖縄県の具志川市、石川市、与那城町、勝連町が、去る一日合併「うるま市」になったのを機に、ブラジル在住の四市町村代表が集まり、新たに、すみやかに在伯市民会を結成した。もともと隣接市町村に違いないが、合併による地縁の弱化を防いだのである▼沖縄県人は、周知のように血縁と同様、地縁を大切にし、村人会をもつくる県人気質がある。母県もそれを大事にし、小さな村単位で研修員を招いたりしてくれる。先祖代々伝承して来た、例えば三線(さんしん)文化を南米の県人子女に伝えることを誇りとする。沖縄県人および子弟たちは、新しい市が誕生すれば、古い会を解消し、新市民会をさらに組織していくだろう▼日本の本州のほうの事情はどうか。合併にしたがって地縁は弛(ゆる)んでいくのではないか。在伯一世の関心事に、「まずは、郵便の届くところをちゃんと知りたい」があった▼母県の予算とか、経済効果とかに関係なく、「私は二世だが、村人会の役員をしている」と胸をはる沖縄県人の子孫の〃故郷向け〃エネルギーはまだまだ衰えない。(神)

05/4/15