たくさんの出会いに恵まれる幸せ―ふるさと巡り、各地で先亡者慰霊―=連載(1)=ボイアフリアのように=三角ミナスアラグアリ=農場“専用車”を体験

4月19日(火)

 三角ミナスの中心都市ウベルランジア、世界遺産の古都ゴイアス・ヴェーリョと州都ゴイアニア、そして〃靴の都〃フランカを一週間かけて巡った第二十一回県連ふるさと巡り。参加者約百人は、今回もたくさんの出会いに恵まれると同時に、ブラジルの歴史や風土の一端に触れた。見渡す限り広がる大豆畑やコーヒー園、ゴイヤス州人の食卓には欠かせないが決して噛んではいけない食材ペキ、年三日だけの州都などのトピックに彩られながら、今回も一行は各地で慰霊祭を催し、先亡者の苦労と遺徳に手を合わせ、かの地の移住史に思いを馳せた。
 「文協の会長選挙はどうなるんだろうね?」。これから始まる一週間の旅への期待感を凌駕するように、参加者の口からは不安と期待を込めた選挙に関する噂話が繰り返される。
 三月三十一日(木)午後九時五十分、予定より十分も早く参加者九十四人全員が揃う。ふるさと巡りの特徴である、時間厳守の〃伝統〃は今回も励行された。時間前だが、一行を載せた三台のバスはさっそく一路北上。
 翌四月一日午前六時半、六百三十キロ離れた最初の目的地ミナス州ウベルランジア市へ到着。三角ミナスの中心都市、同州第三の人口五十五万人を誇る商業都市だ。
 「あれ~、日本国旗。大したもんだね~」。ホテル・アトランチカの正面玄関前にひるがえる旗を見て、夫と共に参加した花柳龍千多さんは思ったそう。よく見ると旗に字が書いてある。実はこれ、ミナス州旗だった。白地の中心に赤三角、その三辺にラテン語が刻まれたこの州旗は、風が吹くと白地に赤しか見えず、実に日の丸に似ている。
 ホテルで朝食をすませ、すぐに出発。午前九時前には五十キロ離れた三角ミナスの農業都市アラグアリで、この地方で代表的な日系農家である大久保満さん(57、二世)のファゼンダ・キロンボを見学する。上野アントニオ元連邦下議の農地だったが、一九九六年に購入した。
 日陰は心地良いが、日向はジリジリと肌が焼けるように陽射しが厳しい。一行は、農務作業者用の中古バス二台に分乗し、コーヒー園へ。エンジン音がやけにうるさく、運転席下の床が一部剥げ地面が見える。窓も乗車扉も開けっぱなし。
 どことなく、ノルデステでよく見られるボイアフリア(直訳すると〃冷たい弁当〃、トラックの荷台などで運ばれる農務者)の雰囲気だ。
 「さあ、サトウキビ刈りにいきましょう。でも、特別サービスで温かいお弁当用意してますよ」とガイドが冗談を言う。すかさず、モジ市在住の早川未香さん(67、二世)は「バルベイロ(サトウキビに付きシャーガス病を伝染する虫)がいるからイヤよ」と応酬し、一同爆笑。
 農場の総面積は二千ヘクタールで、うち百七十ヘクタールにコーヒーが六十万本植えられている。この他、トウモロコシが六百、大豆が六百ヘクタールの〃三本足経営〃だ。昨年は大豆が良かったが、今年は今ひとつ。その代わり精製したカフェの値段が昨年の倍(六十キロで三百五十レアル)になっており、全体としてはまあまあとか。カフェの収穫は五月から六月を予定する。
 「大きくやっているように見えるけど、トラットール(トラクター)とかコイデイラ(収穫機)にお金がかかっているから、そんなに残んないよ」。マリリア生まれ、八四年に当地へ移転してきた農場主の大久保さんはいう。
(つづく、深沢正雪記者)