コラム 樹海

 バチカンの礼拝堂の煙突から「白い煙り」が立ち上り大聖堂の鐘が高々と鳴り渡るとサンピエトロ広場には、歓声と拍手の渦が巻き起こる。新法王・ヨゼフ・ラツィンガ―枢機卿(78、ドイツ人)は、神によって選ばれた―と語り「ベネディクト16世」の法王名を告げる。ドイツ人の法王誕生は九百五十年ぶりであり、イタリア人以外の法王が二代続くことになる▼神父の結婚にも女性の司祭にも反対。中絶や避妊にも大反対という保守派であり、前法王のヨハネ・パウロ二世の側近で理論的な支柱として活躍したが、革新派からは「甲冑枢機卿」との批判も多い。カトリック内での保守派と革新派の論争はかなり激しいけれども新法王はこれらの難問にどう対処してゆくのかが最大の課題となるだろうが、ここ暫くは枢機卿団を軸とする保守派主導で進むに違いない▼今回のコンクラ―べ(法王を選出する枢機卿会議)は、4回目の投票で決まったが、過ぎ去った昔には混乱が多く長いのになると3年有余や半年も法王不在があった。このために日本では「(枢機卿たちの)根競べ」と皮肉ったものだが、こうした歴史的な事例からすれば、ベネディクト16世の誕生は真に素早い選出なのである▼数百年に亙り法王を独占してきたイタリアや有力候補者を抱えていたブラジルの信者らには無念派が多いけれども、これからは―こうした傾向が強まるのは間違いない。世界には十一億人余りの信者がいるし、アフリカ人法王が生まれても不思議ではなく、ブラジル人の法王も決して夢ではないのだから―。(遯)

 05/4/21