コラム 樹海

 やれ委任状だの裁判所への提訴と大騒ぎだった文協の会長選びも、最有力候補である谷広海氏が、土壇場になって出馬辞退を宣言。久しぶりの大騒動にコロニアはやきもきしたけれども終わって見れば何ともあっけない三流芝居の幕切れを思わせる。が、決戦投票にまで持ち込んだ今回の選挙戦が無意味であったわけではない。騒ぎの原因は、百周年祭にとてつもない豪華ビルを建設するの構想である▼上原氏は大学の教授。裏方?の渡部和夫氏は元判事の法律家である。そのためかどうかはよく解らないが、あのビル建設案の決定の仕方が、余りにもトップダウン方式であったのは否めない。上が決めれば下々は従うと考えがちなのは欧米式と言ったらいいか。だが、日本は下から積み上げられてきた意見や計画を大事にするボトムアップ式が多い。この辺が一世と二・三世の相違であり一見すると「対立」と見間違ってしまう。もっと一般の人々との議論を深めて欲しかったのは言うまでもない▼第二は選挙の規定が曖昧であり俄作りの感が深い。本来ならば、選挙のやり方や方法をきちんと決めておくのが筋である。谷広海氏が提訴に踏み切ったのも、条文解釈の違いからくるものであり、合理性はある。しかしながら―訴訟王国・アメリカとは違い日本人は裁判を生理的に嫌う。そのために谷批判となったのだろうが我らが県人会では警察官を会場に入れての総会が何回かあるし、この提訴は騒ぎの本質とは関係ないと見ていい▼それはともかく、戦後移住派の谷広海氏の出馬を高く評価したい。最大の公約であるビル建設反対を迫って―上原会長が撤回に踏み切ったのが大きい。最後は立候補を辞退したが、選挙を果敢に戦い第一回投票で一位の座を占めた意義は真に重い。    (遯)

05/5/3