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前会長が独断で会館売却=「もう解散したらいい」=お家騒動の神奈川県人会=総会開催も低い関心

5月19日(木)

 前会長の高世整一氏が公文書偽造のうえ、独断で協会の会館を売却していたのを受け、三月三十日付けで同氏に対し民事訴訟を起こした神奈川県文化援護協会は十五日、定期総会を開いた。一部会員から「このまま売ってしまって、会自体も解散したらいい」といった暴論まで飛び出したものの、「役員が一丸となって問題解決していきたい」方針で一致。県人会の利益を守るべき立場の会長が、会の財産を個人の判断で売り払うという前代未聞の〃お家騒動〃の今後が注目される中で、同協会は今年九月に創立四十周年を迎える。
 今回の〃お家騒動〃はすでに日本側にも連絡されている。ただ、創立四十周年式典は、「裁判が継続されれば、数年はかかるため、式典を会館で挙行するのは可能だろう」と、現執行部は見ている。
 協会解散を主張する会員もおり、存続の危機を迎えているともいえるが、「今回の解決に奔走しているのは一部役員に過ぎない」と理事の一人は話す。「多くの会員は関心もないし、冷めている。しかし、このまま明け渡すわけにはいかない」とつぶやいた。
 また、別の理事は「会館は一九六四年に建設され、母県や先人たちの尽力の賜物。それをこんな形で売ってしまうのはどうか」と、会員たちの無関心さに疑問を投げる。
 同協会の銀行口座の残金は現在、七万八千レアル。会館を買収した不動産会社からすでに振り込まれた手付金十万レアルは弁護士費用や会館の家屋税などに運用しており、返却は現時点では無理だ。
 この日の総会では〇五年度予算案が発表され、マイナス四万三千レアルの赤字スタートであることが明かされた。この異常事態を受け、総会に出席した約三十人の会員たちに、役員らは経済的協力を呼びかけた。
 協会が所有する「神奈川農場」の十三アルケールの不動産を売却する案も出されたが、「まだ利用価値のある土地で次世代に残したい」との意見もあり、売却案は棚上げされた状態だ。 また、石原会計担当理事は「(会館は)高世会長が売却した九十五万レアルは市の査定より低く、本来なら倍の二百万レアルの価値がある物件」と説明。
 不動産会社と高世氏との間で交わされた契約書には、「四月末には会館を明け渡す」といった記述があるものの、「今まで何の連絡もないので非常に不気味」と石原理事は話す。
 民事訴訟に関して、担当弁護士からは、「勝訴は難しい」との返答を得ているため、現執行部は刑事事件として改めて告訴する方針を固めた。敗訴した際の損害も、高世氏に要求する考えから、同氏の所有する財産の調査も実施、総会で発表した。
「騙されたものの意地、正義からです。もう損得なんてない。本当に悔しい。丸裸になってもらい、刑務所に入ってもらいたい気持ちです」(理事の一人)。
 なお、今回の法的裏付けとなっている偽造議事録は、カルトリオに二枚登録されているが、石原理事は計四種類の偽造された議事録を確認している。このほか協会が作成した正式な議事録もあり、「どれを正当と認めるかは、裁判所に委ねるしかない」。
 今回選出された新役員は以下の通り。顧問=本村喬利、会長=村田洋、副会長=高村ジュン(第一)、白又孝範(敬称略)。

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