王将戦、高根五段勝つ=目の不自由な大原さん健闘

6月1日(水)

 第二十三回ブラジル将棋王将戦大会(ブラジル将棋連盟主催)が二十九日、サンパウロ市リベルダーデ区の同連盟会館であり、全伯から七十六人が参加した。高根富士雄さん(五段、57)=ベロ・オリゾンテ=が大原勝重さん(六段、77)=サンパウロ市=を下して、初優勝を飾った。このほか、ジョマール・エゴロフさん(40)=マリンガ=が四段戦を制し、非日系人で初めて五段に昇段した。
 ブラジル四大棋戦の一つらしく、パラー、ミナス・ジェライス、パラナ州など、全国から将棋愛好家が集まってきた。とはいえ、出場者数は年々減り、八十人を割った。
 優勝経験三十九回、うち王将戦のタイトル十一回を誇る青木幹旺さんが、今年初めて予選敗退するなど番狂わせも生じた。
 こんな沈滞ムードの中、同連盟相談役でコロニア屈指の棋士、大原勝重さんが七年振りに決勝まで進み、会場を沸かした。大原さんは白内障を患い、左目は失明状態。右目の視力もかなり落ちている。
 相手をじわじわと追い詰めていくような指し方は健在。高根さんを最後まで苦しめ、緊迫した攻防が続いた。二人の周りには、自然と人垣が出来ていった。
 高根さんが全伯大会を制すのは、約十五年前に最強者戦のタイトルをとって以来のこと。「何度も詰められたかなと思ったけど、粘り強く戦えた」と顔を綻ばせていた。
 非日系人初の五段になった、エゴロフさんはチェスの指導者だ。二世の友人に誘われて、将棋を指すようになった。ブラジル社会向けの将棋普及に向けて、力になる人材だと期待されている。
 このほか、将棋連盟がかつて文協内にあった時代の愛好家が、二十五年振りに大会に戻ってくるなど、明るい話題があった。
 中田定和会長は大会後、「各地から出場者があり、思ったよりも盛大な大会だった。参加者数が二桁に落ち込んでいるのは寂しいが、名人戦は百人を超えるはず」と話していた。
 各カテゴリーの優勝者は次の通り。【王将戦(五段以上)】高根富士雄【四段】ジョマール・エゴロフ【三段】吉川浩【二段】植田陽一【初段】丸井三郎【親睦戦A】青木幹旺【親睦戦B】西山洋。丸井さん、植田さん、エゴルフさんは昇段した。(敬称略)