ボリビア・サンタクルスの日系2世長谷さん=知事選踏み台に=将来は大統領も=「移住地の実績背負って」

6月1日(水)

 【ボリビア・サンタクルス発】三番目の日系大統領目指して奮闘中――。ボリビアで最大の人口を抱えるサンタクルス市に、将来の同国の行方を担うかも知れない日系二世がいる。今年五十周年を迎えるサンファン移住地出身の長谷倫明さん(45)だ。コロンビアの大学院では政治学を修めた政治学者ではあるが、これまで政治とは無縁だった全くの素人。昨年、同市長選に初挑戦した長谷さんは、落選したものの現職市長らを上回り七位と健闘した。「学者」「二世」「素人」のキーワードはかつてのアルベルト・フジモリ・ペルー前大統領を思わせる。
 「政治家になるつもりなんてサラサラありませんでしたよ」。日本人さながらの流暢な日本語で話す長谷さんは、コロンビアのボゴタの大学院で外交や国際関係を修めたものの、コンサルティング関係の仕事を選択したため政治とは無縁の世界に暮らしていた。
 汚職、癒着、腐敗。南米ではお決まりの言葉が付きまとう同国の政治だが、昨年末行われた市長選に日系人として初出馬。「MACA(市民運動会派)」を名乗る若い政治のアマチュア集団から担がれる格好で、選挙戦に挑んだ。
 「全くダメだろうと思っていた。あまりに少ない票数で罰金さえ覚悟していたんです」。その見通しとは裏腹に、前市長の11788票を上回る13843票を得て二十二人中七位に食い込んだ長谷さん。百万ドル近い選挙資金をふんだんに使える大手党派に対し、長谷さんが用いたのはわずか四千ドルだったが、既存の政治家に飽きた有権者の期待感とハポネス(日系)の顔が追い風となった。
 奇遇にもボゴタの大使館に勤務していた頃、同大使館でアルバイトしていた長谷さんと交流があった中須領事は「日系人に対する信頼はここでも大きい。日本と言うイメージが得票につながったのでは」とその健闘を評価する。
 長谷さんはもちろんのこと、支持者らの手ごたえを感じたことから、次なる目標は今年八月の県知事選挙に変わった。相変わらず草の根で支持拡大を目指す毎日だが、地元のテレビなどマスコミも好意的で、無料で番組の枠を提供してくれるなど浸透度は高まる一方だ。
 「難しいことや特別なことは何にも訴えていない。ただ、せっかくいい法律があるのだから、それを政治家がしっかり守りましょうと言っているだけ」。上流階級には人気がないものの、中流階級からの支持は厚いという。
 閉塞感漂う同国の政治に大きな風穴を開けることができるのか――。知事選で手ごたえを掴んだ向こうには、二〇〇七年の大統領選も見えてくる。「移住地の実績や日本のイメージを僕が背負っているんですよ」。南米の小国にも、確実に日系人の存在感は浸透している。
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 世界の日系大統領 「カンビオ(変革)90」を支持基盤に一九九〇年、ペルー大統領に就任したラ・モリナ国立農科大学長の日系二世アルベルト・フジモリ氏が第一号。九三年にはパラオ共和国大統領に、三重県系の二世、クニオ・ナカムラ氏が就いた。また、自治政府としては七九年のミクロネシア連邦のトシオ・ナカヤマ氏が初代大統領に就任している。