コラム 樹海

 「自分史を書こう」―リオ州文体連に着任したJICAの青年ボランティアも、会報を通じて書くポイントを十数項目用意し、盛んに会員たちに呼びかけている。出生、兄弟、幼少時代、渡伯の動機、移民船のこと、友人、恋人、結婚、仕事、戦時体験、子育て、肉親との別離、などだ▼サンパウロでは、老人クラブのレクリエーション活動を指導している、やはりJICAのシニアボランティアが二年ほど前から呼びかけ、成果をあげてきた。書く人を発掘したのである▼移民は、移民しただけで、すでに波瀾万丈の半生だ。移民しなかった人が平凡にやって来たということではなく、比較にはならないのだが…。とにかく、ブラジルでの半世紀余を綴れば、それだけで、ほかの人たちにも感銘を与えるかもしれない、後世に残せる「自分の歴史書」になるわけだ▼誰のために書くのか、というのも大切である。まずいわれるのは自身の子孫に読んでもらえるように、だ。子孫にとっても日本という国から来た先祖は関心外であるはずはない。だから、ポ語に翻訳できるような態勢がほしい▼もう一つ大切なのは、自分をひけらかすようではならないということらしい。度が過ぎると読み手がしらけてしまう▼リオ州文体連の青年男性は、原稿用紙(四百字詰め)二十枚、つまり八千字くらいを目安にしたらいいという。ふだん、書きつけない人には、作文は苦痛なものだ。しかし、書き残そう、の気持ちのほうが勝れば、作業は進行していくだろう。(神)

05/6/10