ほぼ「大入り」笑いの渦=東京演芸協会の文協公演

6月21日(火)

 東京を中心に活躍する様々な芸人が集まる東京演芸協会(牧伸二会長)から派遣された尺八漫談・野菜吹奏(ベジタブルミュージック)のはたのぼる、相撲形態模写・漫談のパーラー吉松、そして江戸糸あやつり人形の上條充・福田久美子が出演した「寄席」公演(十八日、サンパウロ市・ブラジル日本文化協会)はほぼ「大入り」の盛況で、会場の大講堂は大きな笑い声に包まれた。
 寄席で育った日本独自の芸能を広めようと企画された同協会初の海外公演。約一時間半に及んだ舞台の最後は、「アクアレラ・ド・ブラジル」のサンバに合わせて四人が登場し幕を閉じた。はたは「皆さん日本を懐かしがっているような反応でした。笑い声はブラジル風なのでしょうか。どこか日本と違いますねぇ」と、汗をぬぐながら笑顔で感想を語っていた。
 公演は江戸糸あやつり人形でスタート。「かっぽれ」「酔いどれ」「獅子舞」などが披露された。二十五本の糸でつま先、首、腰まで微妙に動かすばかりか、息遣いまで表現した上條は「三百五十年ほどの歴史があり、少しずつ改良され、今の形になっている」と、その歴史について解説。西欧のあやつり人形が棒を組み合わせたコントローラーなのに対し、江戸糸では矩形の板を利用する点に特徴があると話した。
 波模様が染め抜かれた着物で登場したパーラーは、東京生活三十年の芸人。出身は福岡だ。「九州男児の父はいつも母より先にご飯を食べていた。あるとき、どうしてなのと尋ねたら、『ウチはな、二人で一つの入れ歯を使っているんだ』と父に言われた」。客席はどっと沸いた。
 まわし姿になると人気者の高見盛から朝青龍、若貴兄弟、往年の名横綱・大鵬までの仕草を熱演。いわく「世界民族舞踊大会」で優勝したという触れ込みのコメディーダンス「男の人生」でしめくくった。
 大トリは、同協会副会長のはた。尺八を演奏後、「この楽器は竹で出来ているから、音階に七つのフシがあるんですね。これを七フシぎといいます」。のっけから得意のダジャレを織り交ぜた漫談を展開。野菜に限らず、水道管、ガス・水道のホースにも穴を開け、まるで笛や尺八のように自在に吹奏するはたは、「いろいろな物を吹いてきましたが、ホラだけは吹いた事がない」
 一九八一年ロンドンで開かれた〃一芸大会〃で第二位に輝いた名人芸ベジタブルミュージックではダイコン、ニンジン、さらにマンジョッカで演奏する場面も。サツマイモの「笛」を吹いては「私は食べないで音を出す。皆さんは食べてから音を出す」と笑わせた。
 熱心に舞台を見詰め盛んに拍手を送っていたサンパウロ市の吉武久登さん(70)は、「楽しかった。特に、日本舞踊をやっているので糸あやつり人形の動きには感心した。勉強になった」と話していた。