汗と涙の移民史=大型画面で回顧=NHK映像祭=ブラジル4都市で=『ハルとナツ』も上映へ

6月25日(土)

 財団法人NHKインターナショナルは「血と汗と涙の物語」をテーマにした映像祭を十月下旬から十一月上旬にかけて、サンパウロ、ブラジリアなどブラジル四都市で開催する。日本の秋に同局放映の『ハルとナツ』第一話と、南米移民の三十年間を追った『ドキュメンタリー 移住31年目の乗船名簿』を、三百インチの大型ハイビジョンスクリーンで上映。『ドキュメンタリー』のプロデューサー、相田洋さんの講演会も予定する。案内に来社した国際事業部の中村建哉部長は「映画並みに大きく、テレビよりはるかに高画質なスクリーンで見てもらえる。多くの方にご覧いただければ」と語る。
 映像祭の開催は日本での『ハルとナツ』放送後になるが、国際放送よりは早い時期になりそうだ。候補地はサンパウロ、カンピーナス、ブラジリア、ロンドリーナの四都市。
 上映・講演とも日伯両語で行なわれ、同祭を通して移民史への理解が深まれば、三年後に控えた百年祭に向け、準備活動のムードは一層高まりそうだ。
 番組のブラジルロケに関する法律面の事務や、台本翻訳を監修した弁護士の二宮正人さんは、「『ハルとナツ』は予告編を見ただけでも涙が出そうだった」と、太鼓判を押す。
 すでに開催予定地を訪ねてあいさつに回った中村部長が「各地で意欲的に映像祭の準備をすすめてくれているのはありがたいこと」と言えば、二宮弁護士は「特にロンドリーナでは強い移民パワーを感じましたね」と応じた。
 『ハルとナツ』は、移民によって日本とブラジルに分かれて暮らさなければならなかった姉妹が、戦前・戦後の激動の時代を生き抜き、七十年ぶりに再会する設定のドラマ。橋田壽賀子が脚本を手がけた。
 『ドキュメンタリー 移住31年目の乗船名簿』は、一九六八年に日本を出航した「あるぜんちな丸」に乗船した第二十九次南米移民百三十六人から数家族を選び、十年後、二十年後、三十一年後に追いかけて取材し、その姿を克明に紹介した力作だ。
 相田さんの講演は、二宮さんが同時通訳。「相田さんは意欲満々でブラジルに来るのを楽しみにしてらっしゃいます」という。
 映像祭は、最先端の科学技術や環境保護をテーマに、一九九〇年にスタート。これまでベトナム、ラオス、モンゴル、インドで開催され、NHKをはじめ日本の優れたテレビ番組が各国語に吹き替え上映されてきた。入場者総数は百十万人を突破している。