女性の力アピール=華やかに日系女性フォーラム=10氏が生き生き体験談

6月29日(水)

 文協五十周年最初の記念イベントとなる日系女性をテーマとしたフォーラムが二十四日午後、サンパウロ州議会で開催された。各分野で活躍中の日系女性十人の話を聞こうと詰め掛けたのはほとんどが女性。二百六十席が華やかに埋まった。
 来賓として出席したサンパウロ総領事館の丸橋次郎首席領事は、「もっと前から行われているべきだった。やっと実現したのは素晴らしいこと」と祝福。
 上原幸啓文協会長は「日本人移民の歴史の中で夫や家族を支え、活躍してきたのは女性。文協会長にも女性がなって」とあいさつし、会場を盛り上げた。
 フォーラムを企画・運営してきたのは六人の女性。呉屋春美実行委員長を中心に、相良クリスチーナさん、松永久美子さん、山下リディアさん、上辻照子さん、渡辺ヨランダさん。初めての女性だけのプロジェクトチームだ。五十周年記念行事第一回目とプレッシャーのかかる中で、こつこつと準備を進めてきた。
 開幕直前、桃色のスーツに身を包んだ呉屋さんは会場の入り具合を気にして行ったり来たり。「いよいよですね。今こそ女性の力をアピールするとき」。会場を眺める表情は緊張していた。
 前半は元通産大臣セルジオ・モッタ氏の夫人、ウィルマ・モッタさんから始まり、民主主義の重要さを日系女性の視点から訴えた。 連邦判事の吉田コンスエロさん、移民記念館館長樋口みどりさん、レジストロ市の副市長川本イネスさんはそれぞれの所属する世界での女性や日系としての立場と自分の経験談を語った。
 海軍少尉の山村フラビアさんは「海軍の中では男女関係なく評価され、自分が認められていることを誇りに思う」と話し、「日本の哲学や精神を大切にしている」と述べた。
 コーヒーブレイクをはさみ、後半にはブラジリア学院校長の坂本綾子さん、テレビ・クルトゥーラ視聴覚保存センター所長の岡村リッタさんが自身の仕事の話を中心に家族のあり方などを語った。
 サンパウロ州立交響楽団コーラス指揮者の宗像直美さんは、指揮者の仕事が好きで仕方ないといった様子で幼いころからの経験を語り、「日本的な考え方かもしれないけれど仕事が道楽です」と、音楽への熱意を話した。
 芸術家の鈴木セシリアさんは、夫を支える妻として、芸術家として、そして経営者として、さまざまな立場での経験を披露した。
 最後のパネリスト、映画監督の山崎千津薫さんは子どもの頃からの反骨精神について来場者に向かって語りかけ、これまでのパネリストの考え方とも比較しながら日系人や女性の発言力を訴える一方、冗談も交え会場の笑いをとった。
 また、日本人独特の「目立つのはよくない」「幸せになるのは申し訳ない」といった考え方についても触れ、意見を述べた。
 フォーラムでは、ブラジル社会で成功して生き生きと活動しているように見える彼女たちの、失敗談や挫折経験も多く語られた。文協の副会長を務める杓田美代子さんは「現代女性の考えが聞けて参考になりました。やる気が出ます」と満足な様子。
 午後二時から同七時頃まで続いたが、来場者はそれぞれの話に熱心に耳を傾け、さかんにうなずくなど、関心の高さが伺えた。一方、日系人以外のブラジル人の姿も見られた。
 コメンテーターとして感想を述べたレアル銀行の女性キャリア代表ルシマラ・マコウルさんは、「これまで女性は選択肢がないと思われてきた。男性も、働かなくては、家庭を養わなければ、と選択肢がなかった。ここにいる女性たちは自ら人生を選んでやってきた人たち。素晴らしい話が聞けた」と成功を祝した。
 また、唯一の男性コメンテーターとして参加した医師の石井ウィリアムさんは、「昔は社会に出る女性は男性的に振る舞っていたが、今は女性らしさを大切にしながらも活躍できるようになった。男女は異なりながら補足しあう関係であるべき。文協五十周年のイベントとして大いに意義があった」と称えた。
 終了後、実行委員メンバーは壇上で記念撮影。やり遂げた仕事に「おめでとう」と声を掛け合って喜んでいた。五十周年記念行事は、新しい文協の一面を見せるスタートを切った。