ボリビア変革=今しかない=12月大統領選=日系候補に国民関心=長谷倫明氏=本紙記者に決意語る=連載(下)=34%が支持「勝算あり」

2005年8月26日(金)

 二十日の出馬表明から三日後に発表された国内大手テレビ局UNITELが行った視聴者アンケートの結果によると、現在長谷氏は三四%の支持を得ている。
 現在、出馬を表明している四候補のうち、サムエル・ドリア・メディーナ氏の三七%に次ぐものだ。
 サムエル氏はボリビア・バーガーキングオーナーであり、大手センメント会社を経営する事業家。ペルーのテロ組織MRTAに誘拐された際に支払った身代金百万ドルが日本大使館占拠事件の資金につながったのは、周知の事実となっている。
 同じ日系、政治的手腕が未知数などの共通項から、フジモリ大統領と比較されることも多い長谷氏。
 「フジモリートって僕のことを呼ぶ人もいるけど、ナガタニとして見て欲しい」。日本に亡命、現在訴追中の元ペルー大統領のイメージを払拭することにも力を入れる。
 「日系移住地が努力してきたという信頼があり、クリーンなイメージもある。それは政治にもつながる」と選挙活動に〃日系色〃を最大限利用していく考えだ。愛称はサムライ・カンバ(サンタクルスの人)。 大統領になることにより、日本との関係を期待する声もあるようだが、「援助を期待するより、国内の問題解決が先決」と国民の意識変革をも促したい、とも。
 各メディアでの活動のほか、地方遊説を来月早々にも予定している。重点的に行うのは、インジオが多く住む山間部。
 昨年の市長選では、中産階級に支持が厚いとされていた長谷氏。MNR党からの出馬でその垣根は取り払われたとみるが、日系ゆえのデメリットもあるという。
 「サンタクルスやラパスなどの都市部はともかく、山間部に住むインジオにとっては、日系人は外国人」
 長谷氏は二重国籍を持っておらず、完全なボリビア国民だが、「日系人の位置が宙ぶらりんなことは確か。僕をボリビア人と認識してもらうことが重要なポイント」と話し、民族衣装に身を包んでの遊説も視野に入れる。 
 現在、党では山間部における日系人に対する意識調査を行っている。
 「もちろん、日系移住地も行きます。みんな政治に関心は薄いけど、応援してくれる気持ちはあるはず」と日系票にも期待をかける。
 選挙を二カ月後に控えた十月からが本格的な選挙活動。MNR党は三百万ドル以上の選挙資金を供出することを決定した。
 当選すれば、二〇一〇年まで、四年の任期となる。公約には、貧困撲滅と教育を挙げる。二〇%と高い完全失業率による国民の国外流出にも歯止めをかけたい考えだ。
 「自分の中にある日本人的なところとボリビア的な良い面を出していければ勝算はある」と自信を見せる長谷氏。
 現在、独身。三人の息子はコロンビアに住む。
 「政治では家族が犠牲になるけど、僕にはその問題はない。二十四時間活動できるメリットと考えている」
 サンファン在住の父・拙美さんには、「『政治の世界に入るなんて、頭がおかしくなったんじゃないか』って言われましたよ。政治的経験もないのにってね。けど、よく考えたうえでの判断したこと。今がボリビアの歴史を変えるチャンス。一夜漬けの政治家ですけどね」
 汚職、腐敗、国内政治に対する不信と失望、そして〃ハポネス〃の顔を追い風に、サンファン出身の日系二世がボリビアの救世主となれるのかー―。(堀江剛史記者)

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