日本語教育シンポ=多様化する学習者への対応=連載(1)=10年ぶりの本格開催=250人が熱心に聴講

2005年10月4日(火)

 ブラジル日本語教育国際シンポジウム『多様な背景をもつ学習者―その対応を考える』が二日、サンパウロ市のマクスージ・ホテル内で開催され、約二百五十人の日本語教師らが参加し、熱心に聴講すると同時にさかんに質問した。国際交流基金の協力で日伯文化連盟(槙尾照夫理事長)が主催。本格的な日本語教育シンポジウムとしては十年ぶりとなった。国内のドイツ語教育の現状をはじめ、米国、アルゼンチンの事例などが論じられた。さらに国内のモデルケースなど役に立つ具体的報告も多かった。
 「世界中で、昨今の日本語教育には多様化の嵐が押しよせている」。冒頭、総合司会の三浦多佳史さん(同基金客員講師)は開催動機をそう説明した。
 家庭で日本語をしゃべらない日系生徒の増加、漫画やアニメや最新日本歌謡曲の影響をうけて増えている非日系学習者など、従来の教育法の枠におさまらない層に対して「どう対応すればいいか」という事例が紹介された。
 午前中の基調報告では、USP現代言語学科のゲーツ・カウフマン客員教授が国内のドイツ語教育の状況を、日本移民の歴史と比較しながら分析。さらに全伯ドイツ語教師会(ABRAPA)のリリアン・アルベス・ベルロッファ会長からは、教師養成講座の実状や、南部ではドイツ系子弟の学習者が多いが、サンパウロ州では非ドイツ系が中心であり、地域によって学習者が多様である現状などを語った。
 米国日本語教師協会連合のスーザン・シュミット事務局長は流ちょうな日本語で、〇三年に行われた全米日本語学校ネットワーク会議の報告から同地の現状や問題点を抜粋して発表した。
 USP日本語学科のモラレス松原礼子助教授は、まったくのゼロから始める学生や非日系学習者の増加に対応して学習内容や方法の見直し、学習者同士が教えあう協働学習の導入、漢字の筆順や読みと意味を書いた表を使った独習できるようにした自律学習などを紹介した。
 さらに同連盟の前日本語教師、菊池渡現USP助教授は、日本語学校におけるデカセギ学習者への指導内容のモデルを提示しつつ、教える上での注意事項を豊富な経験談をまじえてユーモアたっぷりに解説した。
 橋本リカさんは、同連盟が七月から実施しているインターネットをとおした遠隔教育を紹介し、「テクノロジーの進歩が教育のあり方を変えてきている」と締め括った。同サイト(www. acbj.com.br)でデモ映像がみられる。
 そのほか、複式授業を単式に変えるなどの大きな改革をおこなったインダイアツーバ日語校、百人以上の学習者を持つ非日系教師の工夫や体験、アルゼンチンのロサリオ校の取組み、メールマガジンを使った教師や学習者の新しいネットワークなどについて発表があった。
 最後には次々に質問が行われ、参加者の高い関心が伺われた。午後六時頃に閉会。パラー州ベレン市からも二人が出席していた。
 次回から数回にわけて詳細を報じる。