日本語教育シンポ=多様化する学習者への対応=連載(3)=ドイツ系教師は3割のみ=「家族を養う人も大勢」

2005年10月6日(木)

 「ドイツ語教師で家族を養う人も大勢います。ただし、二つ以上の仕事をしていないと難しいですが」。日伯文化連盟主催の日本語教育国際シンポで二日、全伯ドイツ語教師会のリリアン・アルベス・ベルロッファ会長はドイツ語教育の現状を語った。
 同団体はドイツ語普及や、教師の相互研鑚やレベル向上を図るために設立された団体。九百三十二人が登録しており、うち最多はサンパウロ州の三百五十人で三分の一以上。次にリオ・グランデ・ド・スール(以下、南大河州)の二百十五人、つづいてリオ州の百四十六人。登録していない教師も含めると全伯で約千二百人にもなるという。
 ちなみに日本語教師は〇三年のデータで千百二十六人いるので、あまり変わらない。ただし、学習者は日本語が二万人弱なのに対し、ドイツ語は五万人と二倍半だ。日本語教師の大半は女性だが、ドイツ語教師の二割を男性が占めるという点も大きく異なる。
 同教師会の会費は年間四十~六十レアルで、残りの活動費は本国政府機関ゲーテ・インスティテュート(以下、ゲーテ)が援助している。
 南大河、サンタカタリーナ、パラナ三州の教師大半はドイツ系三世。しかし、それ以外の地域では比率は低い。とくに北東伯ではほとんど非独系教師ばかりだという。「教師会全体でみれば三割のみがドイツ系です。私も純然たるブラジル人です」。
 南部三州にはドイツ人の入植地が集中していることから、ドイツ人学校から始まって公立学校になったところも多い。その関係で授業で教えるところがかなりあり、公立校教師が求められている。つまり、ほとんどが子ども向けだ。
 日本語学校のような存在、ドイツ語学校はあるのか―と問うと、「南部ではプロテスタント教会がやっている学校が今もたくさんありますよ」と答えた。
 「南部の孤立した遠隔地では四世、五世になってもドイツ語で生活しているような家庭もありますが、それは特殊な例です」と強調する。ただし、本国ではなくなってしまった伝統芸能を保存しているような地域もある、という。
 「ドイツ系子孫の多くは都市部で生活しており、一般的にポルトガル語が中心です」。サンパウロ州では公立校はあまりなく、子ども向けはポルト・セグーロ校やフンボルト校などドイツ系校のみで教えるので三割ていど。残り七割は大人向けの語学学校なので、教師に求められる内容が異なる。
 日語教師の多くは文協の学校や、個人が経営する私塾で働くが、じょじょに公教育機関の割合が増えている。ただ、ドイツ語教師はすでに公立学校や語学学校が中心であり、給与や待遇面での違いがあるようだ。
 ドイツ語にも資格問題があるため、教育省と相談しパラナ連邦大学に特別な教師養成コースを設けた。無料で二年間受講すると特別資格がもらえる。日本語でも同大学で同様のコースが今年から開設されたが有料な点が異なる。そのほか、ゲーテでも四カ月の集中コース(無料)、ドイツ系有名校ポルト・セグーロにも一年間の教師養成コース(無料)がある。
 日本語に比べると進んでいるようにもみえるが、ベルロッファ会長は「世界全体でみるとブラジルのドイツ語学習者は四~五位でしかないので、本国からすると関心が低い」と残念そうに語った。   つづく
   ■訂正■
 五日付け樹海コラムで「ドイツ語学習者は約五十万人」とあるのは間違い。ゲーテに確認したところ全伯で五万人とのこと。

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