コラム 樹海

 紀伊半島の南端にある紀伊勝浦には、まぐろ料理を食べさせることを売り物にした民宿が少なくない。和歌山県は伝統的に漁業県で、なかでも勝浦はよくまぐろを揚げるところなのだ▼さて、よく獲れるから安いだろうと考えるのは間違いである。さきごろ、この欄で同僚が大サンパウロ市圏の市警責任者が、東京銀座で刺し身を食べ、支払いの際びっくりした話を書いたが、勝浦でも同じ体験をするだろう▼その勝浦の隣町の新宮でスーパーを訪ねてみた。もちろん、まぐろの値段を見に行ったのである。きれいなパック(小分け包装)が意外と安かった。最近、日本では産地をパックに明記するのが義務づけられているので、参考までに目を近づけてみた。安いまぐろは韓国からの輸入ものだった▼ほかの魚についても〃でどころ〃を見た。なんと、サーモンはわが南米のチリ産、さらに、ガーナやデンマークから輸入された魚介類が目についた。「漁業県の和歌山が…」などと慨嘆してはいけないのである。南紀地方を牛耳る輸入流通業者が、より安く日本人の「巨大な胃袋」を満たすべく、需要に応えたのだ▼ブラジルの輸出入が今年好調のようだ。食糧品では牛肉、鶏肉、豚肉の輸出が振興している。なかでも、相手国に検疫がうるさくいわれない鶏、豚の調子がいい。牛と合わせると、デカセギ送金額の四倍ほどになりそうだ。日本はブラジルの牛肉を入れない。ならば、穴場は魚あたりではないか、とあらぬことを考えたまぐろの町訪問だった。(神)

05/11/11