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援協福祉部=ありがたくない=〃繁盛〃=世代越え援助要請増える=取扱い件数上昇の一途=「赤字予算」 やむを得ない

2005年11月23日(水)

 コロニアのよろず相談所、サンパウロ日伯援護協会福祉部(八巻和枝部長)。「老人」や「結婚」など、日々様々な相談が持ち込まれている。日系人口の増加・社会の発展とともに、取り扱い件数は上昇する一方だ。救済対象を世代で区切ることは実質的に不可能なため、赤字予算は膨らむばかりだという。
 「日系人の子供が、孤児になって保護されています」。検察局からサンパウロ総領事館を通じて、先ごろ援協に連絡が入った。
 日系四世の混血少年(15)で、福祉関係の非政府組織(サンパウロ市ラッパ区)が預かって世話を焼いているのだという。氏名に日本名が入っていることから、検事が「JAPONES」と判断。総領事館に知らせた。
 援協が事情確認のために、面会に向かったところ、日本に居住する親戚が引き取る方向で話し合いが進んでいた。
 具志堅茂信事務局長は「いくら混血や世代が進み、ブラジル国籍を所持しているといっても、日本名が入っていたら、ブラジル人は〃日本人〃だと考えるんですよ」と渋い表情で明かす。
 移住直後の疲労を癒す場を提供したいと、五九年に創立された援協。その後、国援法による帰国者の世話や老人ホームの開設など事業を広げ、貧困者救済を旗印にしてきた。
 対象者はもともと、一世が中心だった。時代がすすみブラジル国籍を持った二世、三世が含まれるようになってきた。日系コロニアとブラジル人社会がボーダレスになるのにしたがい、対象者の範囲は広がっていくばかりのようにみえる。
 山下忠男福祉委員長(前援協事務局長)は危機感を募らせていう。「今は日本政府からの援助(移住者保護謝金)などがあるので、赤字予算でも何とか、資金を回していける。でも、将来一世がほとんどいなくなったとき、どう対処していくかが問題になるでしょう」。
 どこまで日系人として扱うのか? 将来を予測した議論はかなり前から交わされてきている。理事会自体の世代構成が変わっていく中で、議論が再燃していくかもしれない。前述した、十五歳の少年は珍しいケースだったとはいえ、その一例だろう。
 「経済的状況が中心なら、家庭訪問して調査をすることが可能。しかし、援助するのか否かについて、世代を基準にすることは無理な話です」(具志堅事務局長)。
 本人が〃日本人〃との意識を持っている、いないにかかわらず、行政から援護を求められれば福祉団体の看板を掲げている以上、断るわけにもいかない。同化が進めばブラジル政府から、補助金を受け取られるよう手続きすることも考えられる。
 山下福祉委員長は、援協の創立精神を強調。「三、四世の施設入所者が増えてくるようになれば、そうなるでしょう。でも、ずっと先のこと。援協は日系コロニアを土台にしてつくられたものだから、あくまで援助の対象は日系人が中心です」と使命感を燃やす。
 福祉部の予算は〇五年度、八十一万六千四百レアル。赤字予算を組んだ。具志堅事務局長は「福祉という仕事をしている限り、赤字予算はしかたないですネ」と仕事の難しさを訴えている。

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