ブラジル雑俳紀行―3俳句で旅行の印象作る―=連載(3)=日本人の年金パワー=マナウスのホテルで見た

2005年12月01日(木)

 (3)マナウス
◇1◇ 九月十四日にマナウスに向かう。サンパウロから空路約四時間。世界最大の熱帯雨林アマゾン地帯への入り口、マナウスに到着。
 このマナウスは、十九世紀後半のゴム景気から急成長し、膨大な資金でヨーロッパの技術や文化を採り入れて、港や市場を整備したり、アマゾナス劇場をつくった。ゴム景気が衰退後の現在もそれらが残っている美しい町である。
 現在は多国籍企業の工場の立ち並ぶ一大工業地帯でもあり、事実、飛行場からホテルに行く途上に日本企業の工場もある。
 また、マナウスはアマゾン川に流れ込む最大の支流のネグロ川左岸に位置する。約十キロメートル下流では、ネグロ川とソリモエンス川が合流し大アマゾン川となる地点であるため、マナウス港は、アマゾン川を航行する船の交通の要所で、アマゾン地帯の入り口でもある。
 この合流地点では、ネグロ川の黒い水と、ソリモエンス川の白茶けた水の二つの河川が、水温差と水流の速度差などが原因で混じりあわず、約十キロにわたって境界を保ったまま流れている。
 マナウスに到着した夕方、小舟でネグロ川を下り、この様子を見に行ったが、川幅はとてつもなく広く対岸がかすむほどの流れの中で、見える限りどこまでも川の色が交じり合わない、まことに不思議な光景があった。
●白と黒 どこまで見ても白と黒
 アマゾン川には、ピンク色のイルカが見られるそうである。夜な夜なイルカが美男子に化けて女性を誘惑するというイルカ伝説もあるぐらいであるが、私は見なかったのは残念である。
◇2◇ ホテルはネグロ川河畔にある立派なリゾートホテルである。庭には小さな動物園があり、熱帯のサルや野鳥などが見ることができた。
 夕食をとりに、午後七時三十分ホテルの食堂に行く。バイキング方式で、皆思い思いに食事をはじめて暫らくすると日本人のツアー客がドヤドヤとまとまって入ってきた。過半がシニアで、その半数位は関西弁である。サンパウロでは、あまり日本人の観光客らしき団体の姿は見られず、さすがは地球の反対側、あまりにも遠いブラジルには日本人の観光客が少ない、と思っていただけに驚いた。
 さらに、聞いたところでは、ツアーは、ペルー、アルゼンチンを経由してブラジルに入り、イグナス、リオを経て、ここマナウスからアマゾンを回るとのこと。三週間程の旅程である。これに驚き、また二句。
●年金パワー ブラジル中をかけめぐる
● マナウスも 年金パワーが満ち溢れ
 年金パワーというのは、定年退職後の年金生活者が持つ、経済力、時間的余裕も含めた生活力を指すが、今や日本の消費だけでなく、世界中の観光ビジネスを支えているという印象であった。
◇3◇ 九月十五日マナウス市内見学。朝早く、マナウス港近くのアドルフォ・リスボア公営市場にいく。アマゾン独特の果物クプアスなど、さまざまなフルーツや、唐辛子、野菜や、なまずなどの川魚などが集まる。アマゾンの食文化がある。
 建物は二十世紀始めに、パリのラ・ハーレス市場を模して造られ、食料品の他、民芸品や薬草なども売られている。土産物も多く、食堂もあり、新鮮な焼き魚や揚げ物などが安く食べられる。
 土産物には、センスのいい物も多く、家内はハンモックとか民芸品をしきりに買いたがる。ただ、民芸品はその土地の風土とも関係しており、東京では実用的に使う場所が少ないと思われ、家内を説得するために一句作った。
● 土産物 家に帰ればゴミの山
◇4◇ 少し行ったところに果物や野菜の市場がある。バナナ、パイナップル、パパイヤ、マンゴ等がところ狭しと並んでいる。アマゾン地帯は果物の宝庫である。ブラジルのホテルの朝食は大体がバイキング方式で、しかも果物が非常に多い。
 日本の”健康生活21″では、果物類を毎日摂取するのが望ましいとしているが、ブラジルでは直ちに実現可能という感じである。日本のシニアをブラジル観光に呼ぶ確かな理由になりうるかもしれない。
● 朝、昼、晩果物食べて健康長寿
◇5◇ そのあとアマゾナス劇場にいった。ゴム景気で儲けた金持ち十二人が資金を持ち寄り、八六年に建造された劇場である。イタリア・ルネッサンススタイルで、豪華な内装からは落ち着いた雰囲気が漂い、当時の繁栄振りがよみとれる。
 現在は観光施設等として公開されているが、豪華絢爛であるだけに、もののあわれがないわけではない。
● 劇場を残して終わる ゴム景気
(岡本弘昭さん通信、つづく)

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