コラム 樹海

 岩手県人会の「県人パイオニアと研修生を訪ねるビデオ収録の旅」チームは、さきごろバストスを訪問した。同市を支えているのは養鶏産業だが、チームは、どこの養鶏場もピリピリとした緊張につつまれていた、と報告を行っていた。緊張の原因は「鳥インフルエンザ」である▼日本を含めたアジアでの猛威は、ブラジルではまず業者に緊張をもたらした。感染して鶏が死んだり、処分しなければならなくなった場合、事業にとっては厳しい試練だ。地理的に遠いからといって、ブラジルはけっして対岸の火事視できないのだ▼バストスは「緊張」と報告されたが、国内の家禽貿易業者、飼料原料(大豆など)輸出業者にとっては、鳥インフルエンザはずばり死活問題である。昨年、鶏肉は世界の肉類供給の三分の一を占めた。土地もエサも豊富なブラジルの鶏肉輸出は、ここ五年間で三倍に増えた。米国と並んで屈指の輸出国である▼しかし、輸入国は、輸出国の事情など考慮せず、自国を守るための輸入禁止令を出す。どうあがいても売れない状態になる▼鳥インフルエンザの「害」は、鳥からヒト、さらにヒトからヒトにおよぶと心配されている。日本では、タミフルという抗ウイルス剤の備蓄が進行中だ。ブラジルにもすでに入っていることだろう。六十五歳以上は症状が発現してから四十八時間以内に投与せよ、などの専門家の指示がある▼バストスの養鶏業者のように、緊張して、推移を知り、来るべき難局に対処しなければなるまい。(神)

05/12/07