被爆者健康管理手当めぐって=「時効成立させまい」=ブラジル在住者3人提訴、近く結審

2006年1月10日(火)

 在外被爆者にも支給されるようになった健康管理手当てをめぐって、国が五年で時効が成立すると主張、これに対して在ブラジルの被爆者三人が提訴している訴訟が十八日に、広島高裁で結審する。ブラジル在住の関係者が、今のところ関わっている唯一の裁判。在外被爆者らは期待と不安を混ぜながら、判決を待っているようだ。
 〇二年十二月の大阪高裁判決を機に、国は態度を軟化させ、手当ての支給のほか、医療費助成、在外公館での手当ての申請受付など在外被爆者に対する援護策を打ち出してきている。
 時効問題を巡る裁判では地裁で、被告である国が勝訴。原告側が高裁に控訴した。森田隆・在ブラジル原爆被爆者協会会長は「戦後六十年、協会設立から二十二年が過ぎたが、私たちの望む援護は実現されなかった」と糾弾している。
 時効裁判で原告の一人である、向井昭治さん(77、広島県出身)は、ブラジルに居住する兄弟四人が被爆者。長男である向井さんは「被爆後、弟たちにずいぶん苦労をかけてきた。きちんとした援護がもらえるようにしてやりたい」と、かねてから口癖のように語っている。
 同種裁判では長崎地裁で被爆者が勝訴したが、福岡高裁で逆転敗訴。広島高裁での判決が注目されるところだ。原爆被爆者協会はあくまで、日本と同等の権利を求めている。同協会によれば、被爆地に近いところで被爆した人を対象に支給される医療特別手当も、海外に住んでいると受給できておらず、今後裁判に持ち込む考えも示している。
 担当の足立修弁護士が二月に来伯。裁判のことなどを調整する。