汚染進む飲料水源池=流域環境改善調査=JICA協力で実施=ビリングス湖

2006年1月20日(金)

 約千八百万人が生活する大サンパウロ圏内の二〇%の飲料水源池で近年汚染が深刻化するビリングス湖の水質改善を目指すための調査を、国際協力事業団(JICA)と湖水面積の六割を有すサンベルナルド・ド・カンポ市が合同で行なっている。昨年六月に本格スタートした「ビリングス湖流域環境改善計画調査」で、今年十月にも終了。複合的な対策計画が策定された後、「早ければ二〇〇八年にも」(調査団筋)、国際協力銀行(JBIC)からの融資をもとに計画が実行される可能性がある。
 同湖はサンパウロ、ディアデマ、サント・アンドレーなど大サンパウロ圏内の他五都市にもまたがる、一九二八年にカナダ系電力会社ライトによって建造された人口湖。
 汚染が深刻化する背景には、バラック小屋を建てるなどして湖の流域に暮らす「非正規住民」八十六万人の存在がある。下水が直接湖に垂れ流され、その影響で藻類が繁殖したり、悪臭が発生している。
 本来住んではいけない地区に住居を構える「非正規住民」とはいえ、強制撤去は現実的に無理。しかし二千万人近い市民に飲料水を提供している水源池だけに、水質改善に繋がる対策案の実行が急務だ。
 サンベルナルド・ド・カンポ市はブラジル政府を通じて日本の外務省に協力を要請した。これを受けたJICAが二〇〇四年十一月、事前調査を開始。昨年六月から始まった「実行可能性調査」で湖流域の水質汚濁状況の把握に努める一方、最優先される解決案が検討されている。
 現段階では下水道整備やゴミ処理、汚泥対策などが想定され、調査団筋は「流域住民が環境に配慮するようになる参加型プロジェクト」の必要性も強調する。
 調査は十月にも終了し、その結果を示して、JBICに円借款(有償資金協力=融資)を申請する予定。
 これに先立ち、サンベルナルド・ド・カンポ市のウィリアム・ディビ市長と同市企画情報局の南洋行局長が二月末に訪日する見通し。十八日付地元紙ディアリオ・ド・グランデABCが報じた。
 同紙は記事の見出しで「日本からビリングス湖に二億ドル(約二百三十億円)」としているが、調査団筋は「具体的な金額の話はまだあり得ない」と否定している。