農協役員の心得は?=セミナー田中講師語る=「数字出して分析を」

2006年1月27日(金)

 二十三日からニッケイ・パラセホテルで開催されている「第六回日系農協活性化セミナー」(JICAサンパウロ支所、ブラジル農業拓殖協同組合中央会共催)。講師に田中規子・研究員農学博士(JATAK農業技術普及交流センター)を招き、同日午後二時から五時まで「農協役員の心得」と題した基調講演が行われた。
 田中講師は、農業経営学、協同組合論などを専門にブラジル農業や日系農協をテーマに研究をすすめてきた。二〇〇〇年にはピラシカーバ大学で客員研究員として在籍した経験を持つ。現在は、酪農学園大学で非常勤講師をするかたわら、農業コンサルタント会社である地域計画センターで客員研究員を務めている。
 インテグラーダ、トメアスー農協をはじめ、パラグアイ、ボリビアの農協も数多く視察してきた。「このように、いくつかの日系農協を見学してきた中で感じたことを話したい」と前置きをし、「南米農業の変化と農協」、「戦後日本における総合農協の特徴」、「農協の理念と目的」へと話をすすめた。
 田中講師は、生産規模の拡大、流通経路の変化、農業不況の中で特に一九九〇年代以降、農家層の二極分化が進んでいると指摘。家族経営だった中間層が大規模化していくか、事業を縮小して小規模化するか両極端に向かっている。「カッポン・ボニート農協も言っていたけど、これは全体的な問題だと思う」。
 そのような中で、日本の
農協と比較した場合、ブラジルをはじめ南米の農協は、より協同組合としての存在価値を強く打ち出すこと、協同組合の基本に立ち返って農協経営を考えることが大切だと主張。山形県余目農協と鶴岡生協共立社との協同組合間提携を中心に事業を展開してきた事例を紹介し、「ブラジル農協は、コチア解散後、生産資材価格が商系によって引きあげられたことが問題となり、再組織化を目指したいという経緯を持つ農協もあるが、生産資材購買においての農協間提携も考えられるように思う。さらには、近隣の似たような生産物で同じような農家規模を基盤とした農協の販売事業提携も考えられるだろう」と提案した。
 次に、農協役員に必要なことを単協組織における理事、監事に絞って説明した。「まず、役員が考えなければならないのは、理念・方針・目標の設定。それが定まったら、次は、長期計画の作成をすることが大切です」。その一例として、北海道F町の労働力不足問題の解決策として、収穫期に都会からアルバイトを雇っていることをあげた。「驚いたことに、いわゆるフリーターなどの若者が喜んで農作業をやっている。このような制度は野菜産地では珍しい」と話す。
 また、経済分析をして数字を出してみることも重要だとする。「日本でもなかなかここまでいかないけど、数字を出して、分析することが必要です」。最後に、農協役員は、経営理念を明確にし、それに基づく基本方針を設定して長期計画を策定していかねばならない。それに付随して中期計画と短期計画を作成し、実行することを打ち出し「一度、過去の事例を振り返り、協同組合とは何か、原理原則から考え直してほしい。家族経営のための協同組合を皆さんと考えていけたら、と思う」と話した。