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消えた5万ドルの行方は?=三指会=石井氏と元役員らが対立=真っ向から食い違う主張=感情もつれ、泥沼化

2006年3月8日(水)

 ボーイスカウトのOB会として一九八二年に発足、指導者の育成や日本語教育などの活動を行ってきたブラジル三指会。同会を代表する石井久順氏と元役員二十数人の間がきな臭くなっており、コロニアに様々な憶測、噂が飛び交っている。会長偽称問題、五万ドル紛失事件、会館売却――。様々な問題を巡って両者の意見が真っ向から対立、主張は平行線をたどっている。「会費も払わず、何の協力もしてこなかった連中。権利を主張するなら、義務はどこにある」と語気を強める石井氏を会長と認めない元会員たち。会合を重ねるなかで、「別に総会を開催し、会を解散、会館を売却する」決議した。人材育成をその目的とするボーイスカウト精神は、両者の間に深まった溝に落ち込んでしまったかのようだ。

■会長偽称問題■
 「第一副会長だった九八年に総会を開き、会長に就任した。団体運営に経費がかかることから、カルトリオに登録はしていないが、それはどこの団体でもやっていることなのでは」。三指会の代表として、会長職を自任する石井氏の弁だ。
 「井上ゼルバジオ二代目会長(九九年に死去)からも、亡くなる前に頼まれている」。
 元役員たちは、八四年に登録されている総会議事録が法的に有効と主張、「石井氏を会長としては認められず、現在は会長不在の状態」との考えを示している。
 「西村一喜初代会長、井上前会長が亡くなり、第一会長がその責を継ぐのは当然ではないか」と石井氏は元役員たちの主張に首をひねる。
■五万ドル紛失事件■
 会館建設に関して、「日本の篤志家が寄付した五万ドルが行方不明」として元役員らは、石井氏を激しく糾弾している。
 元役員の徳留清氏は、怒りを隠さない。
 「一年ほど前、会合を開いたとき、石井氏は我々の目の前で『強盗に入られた』と三度も説明した。その後、『初めから送られてなかった』と言い換えた。そんな馬鹿な話がありますか」。
 石井氏の説明によればこうだ。東京の篤志家から、寄付の約束があったのは事実。早期の寄付をお願いするため、本人にも承諾のうえで、授受の前に経理(九七年の収支決算書)に入れたという。
 しかし、実現しないままに本人が死去。裁判所で石井氏立会いのもと、遺書が開封されたが、「寄付について一言もなかった」。
 遺産を受け取った親族に履行を何度も頼んだが断られ、結果的に反古になったのだという。
 強盗に入られたとの発言については、「そんなことを言ったことはない」と真っ向から否定、「強盗の被害を受けたのは会社の金。ない五万ドルが盗られるわけがない」と話している。
 元役員の一人は、「ある弁護士によれば、時効が発生しており、法的には問えないようだが、あくまでも石井氏の倫理の問題」。
 両者間の完全な齟齬。過去の問題ということもあり、水掛論の様相も呈しているが、真相は藪の中なのか――。
 現在石井氏は、当時の関係者に文書での説明を要請しており、授受の事実がなかったことを強く主張している。
■会館売却問題■
 会員の減少や年間約二千レアルかかる家屋税の支払いが困難なことから、石井氏は会館売却を検討。
 弁護士に相談のうえ、信頼できる元会員や賛助会員に連絡。理事会を組織し、臨時総会の場で会館売却を決議する考えだったという。
 そうした動きのなかから、外塚武三、村田清、徳留氏ら元役員が「勝手にはさせない」と、反対の立場を表明、この一年間で約二十回の会合を開いている。会費も徴収しているという。
 「再三の連絡にも関わらず、石井氏からの返答はなかった」。元役員らは、二月十二日に北海道協会で会合を開き、代表者が石井氏に最後の通告を行う決議を行った。
 結果、石井氏の歩みよりの姿勢はないと判断、八四年当時監事だった徳留氏らが発起人となり、別に総会を開く考えだ。
 目的は三つ。会を解散し、会館を売却、慈善団体に寄付すること――。
 石井氏は言う。
 「私に対する不信から、様々な中傷を重ねているが名誉毀損にあたるのではないか。売却後は定款にのっとり、慈善団体に寄付するのは当然で、当初から一貫している私の考え。隠し立てすることはなにもない。会館は売却しても三指会を解散する考えはない」。
 両者がそれぞれに総会を開くとすれば、どちらの決議が有効になるのか、元役員らは会員として認められるかなど、これから定款や法律に照らした判断が求められことになり、問題解決が長期化する雲行きを見せている。

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