選挙予測記事の連載を終えて=ソール・ナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載(中)

2006年3月15日(水)

 私は、いずれにしても、今年の大統領選挙が決選投票の段階まで進むものと仮定して、話を進めてきていますが、それは、ルーラ大統領の支持率が今年に入ってかなり回復基調に乗ったとはいえ、予選投票の段階であっさり勝負を決めるのに、必要な全有効投票総数の五十%プラス一票を獲得するのは、依然としてもし至難の業だと観測されるからです。
 しかし、野党の公認候補がセーラ市長以外なら、場合によっては、予選の段階で、ルーラ現大統領にあっけなく返り討ちの格好になる可能性もあります。ルーラ大統領が再選続投を目指してうたい文句にしようとしているのは、〈政治が不正汚職の暴露で駄目なら、経済で勝負しよう〉ということですが、世界一の高金利が主因となって、昨年のPIB(国内総生産)の伸び率が公式に二・三%に留まったことで大いに水を差さされた印象を受けます。
 選挙関連の法律によりますと、各党の公認大統領候補が正式に選挙運動を始められるのは、選挙の行われる年の七月六日以降となっていますが、現職の大統領であるルーラ候補だけが自分に一方的に有利な仕組みの行政マシーン(組織)を利用してあらん限りの影響力を行使し、又、大統領専用機で全国を飛び回って、年中、選挙運動に似たようなことをやっていても、先ず、これまで、お咎めを受けたことは、ありません。これでは、現職の大統領のみ、百メートルも先に立たせてから、短距競争の用意ドンをやるのに等しく、九八年から実施された現行の大統領再選制度の不公平な点の一つとして指摘されています。
 さて、今年に入ってからの新しい各世論調査の結果が出揃いました。ここでは、政財界方面で一番信用度の高いData Folha社の調査結果にだけ絞り、参考にしてみたいと思います。先ず、再選続投を目指すPT与党連合のルーラ候補に第一次投票(決選)の段階で対決するのがPSDBを中心とする野党連合のセーラ候補と仮定した場合です。
 二月二日に発表された今年最初の調査結果では、セーラ四九%対ルーラ四一%の数字が出ていて、まだ八ポイント差で以って前者が有利となっていたのに、それから約二十日後の同月二十一日に発表された今年二回目の調査結果では、ルーラ四八%対セーラ四三%と、ちょうど逆転した数字となりとなっており、五ポイントの僅差とはいえ、数カ月ぶりに、現職の大統領であるルーラ候補が首位の座を奪い返して、念願とするトップに立ちました。他の調査結果も、殆ど似ています。ただ、今の段階での世論調査の結果は、まだ単なる人気投票みたいな要素を多分に含んでおり、それを見て一喜一憂するには、与野党両陣営とも少し勇み足、いや、性急過ぎるような気がしてなりません。

■今年の大統領選挙をこう考える=赤嶺 尚由(ソール・ナッセンテ人材銀行代表)=連載第1回

■今年の大統領選挙をこう考える=ソールナッセンテ人材銀行代表=赤嶺 尚由=連載第2回

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