コラム 樹海

 新聞やテレビ・雑誌の記者には、必ず守るべきものがある。その第一は「取材源の秘匿」。つまり―ある事件を取材するときに得た情報を誰が話したかを明らかにしない。例え警察沙汰や裁判になっても「情報を提供した人の氏名を秘匿する」のが鉄則であり「表現の自由」と並びマスコミの原則となっている。日本でも最高裁判所は、この事をはっきりと認めている▼ところが、先日の東京地裁は「(特別な事情がある場合は)記者の証言拒否は許されない」という異例の判決で新聞界は大騒ぎになった。敗訴したのは読売新聞の記者だけれども、この裁判とまったく同じ事件に関係したNHK記者には昨年10月、新潟地裁が「証言拒否は正当」の決定をしている。この問題はマスコミにとっては生命を賭けるほどに大切であり、東京地裁の判断を唯々諾々と受けるわけにはいかない。読売新聞も即座に抗告に踏み切り闘う姿勢である▼こうした騒ぎの最中に東京高裁が17日、NHK記者の「証言拒否は正しい」の判決を下した。昨年の新潟地裁の決定を全面的に支持したものであり、東京地裁とは逆判断である。東京高裁は「報道機関の取材活動は、民主主義社会に不可欠な国民の知る権利に奉仕する報道の自由の前提」とし、記者の立場を擁護している▼日本新聞協会と日本民間放送連盟は東京高裁の判決を歓迎し「取材源(情報源)の秘匿は、いかなる犠牲を払っても堅守すべきジャーナリズムの大鉄則」の緊急声明を発表したが、読売新聞の抗告審でも同じ内容の判決を期待したい。   (遯)

06/03/21