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アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(3)=食料調達、山七面鳥仕留める=椰子の葉ふき仮小屋建設

2006年3月22日(水)

 しばらく休んでから、また歩き出す。川に沿って下る。川の名はマッサランドゥーバ。イガラッペー・デ・インフェルノの一支流である。二時間ほど歩くと、川の屈曲点に水が残っていて、川幅も十五メートルくらい。屈曲点の近くに小高いところがあり、設営に適しているので、奥地に侵入する仮小屋の建設にとりかかる。
 フィルモは食糧調達のために銃を手にして密林に分け入り、狩りに出掛けた。私と弟、シッコは、仮小屋建設の材料集めに取り掛かる。小屋の大きさを四メートル×六メートルとして、必要な柱、梁、桁、垂木などを伐り出して集める。それが終わったら、一人は蔓や木の皮を集める。二人は椰子の葉を集め、葺(ふ)けるように、葉を片側に捻る。
 たくさん用意したところで、仮小屋の建設に取り掛かる。まず腕くらいの太い木を二メートルほど切り取り、一方を両側から削ぎ落として楔状にし、これで穴を掘る。九つ掘り上がったら柱を立て、桁を厳重に蔓で縛り付ける。そこで梁を乗せ、垂木を縛り付けて骨組みができあがる。
 今度は、開いた椰子の葉を下のほうから次々と垂木に縛り付けて葺いていく。片側が葺き終わり、反対側をあと半メートルくらいで葺き終わるところで椰子の葉がなくなってしまった。また取りにいくのも面倒なので、持って来たシートを棟を覆うようにして、椰子の葉の足りない分も覆ってしまった。これで一丁上がり。
 あとは、下をきれいに掃いて落ち葉などがないようにし、小屋の周囲に溝を掘って雨水の侵入を防ぐ。小屋の中をきれいにするのは、蠍や毒蛇、毒グモ、百足(むかで)にやられぬ用心である。
 ちょうどできあがったときに、フィルモがムットゥン(山七面鳥)を二羽とアララを一羽獲ってきた。ムットゥンは全身黒色で青黒色の美しいつやがある冠毛を持つ。アララは、大インコのことで、青と赤とあり、ともに美しく、長い尾羽根、曲がった鋭い嘴を持ち、カスタニャやサプカイヤの固い殻を噛って穴をあけ、中の実を食べる。
 アララは肉が固いので、ゆっくり煮るとして、ムットゥンを食べることにする。羽をむしって頭と足と内蔵は、ひとまとめにして小屋から遠いところに捨てに行く。これは、血の臭いにひかれて集まってくる野獣に襲われないためである。
 あとは適当な大きさにブツ切りにして鍋にほうり込み、水だけでグツグツ煮る。十分煮えたところで、塩をいれて、またしばらく煮ると出来上がり。米は飯盒(はんごう)で炊く。なにやらどこかで飯盒炊さんをしているような感じだ。
 ムットゥンの肉は軟らかく、塩加減も適当で、腹が減っていたせいか、ひどく旨かった。あとは、食器を溜まり水で洗い、ハンモックにひっくり返る。溜まり水といっても、川の曲がり角の深くなったところで、それが乾期で川が干上がっても半月形に水が残っている。この溜まりは長径三十メートル、短径約十五メートルくらい。水深は二メートル以上、魚はかなり居そうだ。
 この溜まりは、ポッソ・ダ・アンタという名前だ。ポッソは水溜まり、アンタは貘のことで、多分貘がよく水浴びに来る水溜まりという意で、猟師たちがつけた名である。
 小屋の位置は、バーハ・デ・アララという名で、バーハは止まり木、アララは大インコのことで、大インコの止まり木ということになる。つづく (坂口成夫さん記)

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■アマゾン探検記――一戦後移民の体験――連載(2)=長径25センチの亀、〃裏表〃焼く=野蛮に昼食、指脂だらけ

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