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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から =連載(37)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=「悔しい」気持ち

2006年4月13日(木)

 「先生、ストップウォッチ、貸して下さい」。放課後の職員室に次々に子供たちがやってくる。二週間後の日曜日は、陸上大会。その陸上大会に向けて、自主的に練習を始めたのだ。上級生が下級生に教えている。放課後のグランドでスポーツをする子供たちの姿が見られ、日本の学校を思い出させた。
 日本では、野球、陸上、テニス、剣道、そして、吹奏楽部、美術部など様々な部活があり、授業が終わってから、日が暮れるまで、放課後の学校では生徒たちが活き活きと活動している。
 私も小学生から高校生までバスケットボール部に所属していたが、私のこの頃の思い出といえば、ほとんどこの部活で占められてしまうほど、夢中になり、没頭していたものだ。
 末っ子の甘えん坊だった私も、めそめそしなくなったし、努力することを覚えた。そして、チームをまとめるということも覚えたのだ。悔しくて悔しくて我慢していた涙がこぼれてしまう、という体験は、あの時だからこそできたものかもしれない。
 「勝つ」ために全力で努力し、持てる力を全て発揮して立ち向かったのに負けたから悔しかったのだ。
 ピラール・ド・スール日本語学校では、一九九九年にJICA日系青年ボランティアの体育教師によって、体育と同時に陸上が導入された。練習は金曜日の週一回。陸上で「勝つ」ためにはとても足りない練習時間だが、子供達の習い事や教師の都合もあり、皆でできる日は週に一回しかない。
 今までは、その週一回の練習さえ参加したり、休んだりしていた子供たちだが、五年、六年と陸上を続けるうちに子供たちの意識も変わってきたようだ。七年目の今年は多くの子供が自主的に自分たちだけで練習をしていた。
 四月九日日曜日、サンパウロ州マイリンケ市で行われた日系青少年陸上大会にピラール・ド・スール日本語学校から十六名の生徒が参加した。練習の成果が発揮され、メダルを首から下げた子供たちは誇らしい顔をしていた。今までの楽しいだけの陸上大会ではない。頑張った成果を発揮する大会に変わったのだ。
 「先生、悔しい。今度から週に四回練習するよ」という子供たち。そうだ、悔しいのは努力したから。頑張ったから、悔しいんだ。きっと初めて自分と戦って、生まれて初めて本当に「悔しい」思いをしたのだろう。
 私の目の前で、また、子供がぐんと大きくなった。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】広島県広島市
【年齢】29歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
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