日本の法務省=入管が「定住者告示」一部改正=連邦と州レベルで求められる無犯罪証明書=情報錯綜、混乱も=業者の声「デカセギの質維持にいい」

2006年5月19日(金)

 「定住者」の在留資格で、日系人ブラジル人が日本に入国する場合、連邦と州レベルで無犯罪証明書が求められるようになった。三世などの対象者がビザ取得や日本で在留資格を変更・更新する時に手続きが煩雑化した上、情報の錯綜や混乱がみられているようだ。一方、デカセギの質低下を懸念する、斡旋業者からは「もっと早い段階で義務付けてほしかった」との声も聞かれている。無犯罪証明書提出をめぐる余波を探ってみた。
 滋賀県内で働く二世の独身男性(28)は、在留資格が今年八月で切れるため、人材派遣会社(日本)から呼び出され、必要書類をそろえるよう指示を受けた。
 その中に、ブラジルの無犯罪証明書が含まれていたため、すぐにブラジルに住む父親(61)に連絡を入れた。
 この父親は「無犯罪証明書がいるのは三世からでしょう。彼の友人で同じく二世の中には、証明書をいらないという人もいるし、地方によっても指導方法が違うようなんです」と困惑。
 期限が迫っていることから、斡旋業者に頼んで、証明書を取り寄せることにしたという。
 提出を求められる無犯罪証明書は、ブラジル連邦警察及び居住していた州を管轄する民事警察がそれぞれ発行するもの。
 法務省入国管理局の「定住者告示」の一部改正で、在留資格を取得(更新・変更)する要件に「素行が善良であること」が追加された結果、必要になった。
 総領事館の査証担当領事によれば、対象は三世やその配偶者。日本人の配偶者や子供は含まれない。帰化した後に生まれた子供は三世の扱いになる。
 州レベルは手に入れるのが容易だ。連邦レベルでは十五日くらいかかる上に、連邦警察が限られた場所にしかないため、地方在住者は手間取るという。
 サンマックス社の佐藤ケリーさんは「五月から始まったばかりなので、まだ何とも言えませんが、個人が連邦警察にいって、証明書をもらうのは大変かも」と予測する。
 いずれの証明書も、第三者に委任することが可能だ。日本居住者が委任状を出す時は、署名の確認書が求められるため、在日ブラジル総領事館まで出向かなければならない。
 ブラジルでは、無犯罪証明書を扱う専門業者も現われた。料金は百レアルに近い数字。急ぎの場合は、三百ドルにも達するという。
 女性斡旋業者は、デカセギの質が悪くなっていることを指摘。
 「十人日本にいけば、三人が定着しないでどこかにいってしまう。昔は百人に一人の割合だったのに。引き取ってほしいと、雇用主から頼まれることがある。商売上がったりですよ」とぼやく。
 念頭には、ブラジル人の犯罪があるようだ。「無犯罪証明書の提出を求めるのは当然なのでは。もっと早くからしていれば、デカセギの質をある程度維持できたかも」と不満をぶつけた。
 四月二十九日から施行になった「定住者告示」の一部改正。法解釈が一般に認識されるまで、しばらく混乱がみられそうだ。