コラム 樹海

 南米の政治が「反米」を標榜する傾向を一段と強めている。チャベス大統領のアメリカ嫌いは有名だが、ボリビアのモラレス大統領も左翼系でありチリを始めメルコスール4か国も革新系である。近く、決戦投票が実施されるペル―でも左派のウマラ氏とガルシア氏の二人が戦うことになっており、ここでも左翼の政権が誕生する▼ペロン、アジェンデ、チェゲバラとこの地域には左翼系の政治家が多い。ボリビアは1825年の独立から188回もクーデターがあったとされるほど政情が不安定であり、チリのアジェンデ政権も軍事革命で倒れたし、ペロンの亡命でアルゼンチンが揺れもした。このように革新系政治家が活躍したのは事実ながら南米に7か国も左系の政府が登場すると予測した専門家は少ないのではないか▼この情勢変化は、十数年前までは予想しにくいことだった。米との関係も良好だったし、云わば「おとなしい南米」であり、ブッシュ大統領をテロリストと名指し自由経済政策を非難する過激な国になると予測した人は零に近い。米が主唱した米州自由貿易地域の構想が中断したままになっているのも、ベネズエラなどの猛反対のためだし、域内の国々にも亀裂が生じている▼そこへ今度はエクアドルの油田接収があり、米の業者と揉めている。米は中南米を「裏庭」としてきたが今や最悪の関係に転落と見ていい。しかも、ベネズエラ、ボリビアのように原油とガスを武器にした「反米」だけに米としても軽軽しく手出しができないの悩みもあるし、この難問の解決にはかなり梃子摺るのではないか。  (遯)

 06/05/20