本紙連載を日本で出版=『海を渡ったサムライたち』=邦字紙として初めて=日本での関心喚起を狙い

2006年6月3日(土)

 日伯交流年や日本移民百周年を二年後にひかえ、日本でのブラジル移民に対する関心を喚起するために、ニッケイ新聞社は連載記事をまとめ、この六月に本として出版した。ブラジルの邦字紙が連載記事をまとめて日本で出版するのは、これが初めて。
 これは第九十八回目の移民の日を記念すると同時に、百周年に向けての準備の一環となる。
 タイトルは『海を渡ったサムライたち(邦字紙記者が見たブラジル日系社会)』(ニッケイ新聞編集局報道部著、幻冬舎ルネッサンス、千八百円)。六月第二週から東京をはじめ日本全国の書店にならぶ。
 今まで日本の情報はたくさんコロニアにあふれていたが、日本の人は日系社会のことを知らなかった。これを機に、日本国内で少しでも、ブラジルや日系社会に対する関心が高まることを期待しての企画だ。
 本の内容としては、現在話題をさらっているサッカーのドイツW杯にちなみ、ネルソン吉村からラモス、今回の日本代表にも選ばれた三都主まで、日本に渡ったブラジル生まれのサッカー選手たちのアイデンティティや心の軌跡をたどる連載「日伯セレソン物語―海を渡ったサムライたち」が表題。
 さらに、祖国・日本を愛するがゆえに引き起こされた第二次大戦中の悲劇と混乱を描いた「五十七年目の記憶―コロニアが見た戦争」のほか、カラオケ・アニメ・漢字などの海を渡った日本文化の変容を探る「越境する日本文化」、日本人として人格形成してからブラジルに帰国したデカセギ子弟の現地適応問題を扱った連載など、日系社会の姿を現地で定点観測、または地元紙として掘り下げた様々なレポートが掲載されている。
 編集を担当したのはアスミ工房(東京都渋谷区)で、元パウリスタ新聞記者の田口義博さん。今後、ブラジルとのつながりを持って出版事業を展開する予定。この企画は何年も前から温められてきたが、OBである田口さんの全面的な協力を得て今回初めて実現した。
 「今まで、出版物やテレビ番組は日本からコロニアへ一方通行だった。これからは相互交流の時代。〇八年に向けて日本でいろいろなブラジルの情報が広まる一助になれば」とニッケイ新聞社の高木ラウル社長は出版意義を語った。