JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から =連載(47)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=カリブ海の日本語学校

2006年6月22日(木)

 中米カリブ海に浮かぶ島、イスパニョーラ島。その島の東三分の二を占めているのが、ここドミニカ共和国である。国全体の面積は、日本の九州と沖縄県を足したくらいの大きさだ。 人口は約八百万人。島の西三分の一には、世界でも指折りの最貧国といわれるハイチ国がある。
 首都サントドミンゴは人口二百万人の大都市。新市街には、近代的な建物が立ち並び、交通量も多い。物価は日本と比べてもさほど安くはないが大抵のものが手に入る。
 一方、ユネスコの世界遺産に指定されている旧市街には、コロンブスが第一回航海のときに足を踏み入れ、スペインによって新大陸最初の町が作られ繁栄した歴史があり、ヨーロッパ風の町並みや、歴史的建造物が多く残っている。
 また、人々を魅了してやまないのが、ドミニカの海である。南はカリブ海、北は大西洋に面しており、美しいビーチは数知れない。 観光化され、リゾートホテルが軒を連ねるビーチは、ヨーロッパからの観光客に人気が高く、外国人で溢れているが、知る人ぞ知る秘境もある。日本ではなかなか拝むことのできない鮮やかな青色の海は、何もかもを忘れて穏やかな気分にさせてくれる。
 人が集まる首都やリゾートと、そうでない地方にある田舎とでは、様子が大きく異なる。子供たちは裸足、裸で走り回り、牛や馬が通行の邪魔をする。常夏の気候のおかげで食べ物には困らないが、電気と水が不足しており、停電は日常茶飯事。
 私の住んでいる町、アスアも然り。首都からバスで二時間離れた南西部の田舎町なのだが、一日の半分は電気がないのが当たり前。 夜電気がない日は、ランプや充電式ライトを駆使して過ごすか、早く寝るに尽きる。また、アスアはドミニカの中でも一番暑いといわれている町のひとつで、一年中暑くて毎日大量の汗をかくのに、水がなくてシャワーを浴びられない日もある。人々はそんな過酷な生活環境の中、家族、近所同士で協力しながら、実に逞しく生きている。
 アスアにある日本語学校(南部校)には、現在、十一歳~二十一歳までの日系の子供たち九人が在籍している。
 ドミニカ全体の日系人の数が約八百人、全国に八校ある日本語学校に在籍する子供の総数が約百人であることを考えると、かなり小規模といえる。
 南部校の子供たちはみな二世・三世で、日本語能力のレベルは様々。日本滞在経験があり日常会話に支障のない子もいれば、まだ挨拶やひらがな・カタカナを勉強中の子もいる。
 年齢もレベルも違う子供たちだが、大きい子が小さい子の面倒をよく見て、みな仲が良く、日本語学校が好きな様子。ドミニカ生まれ・ドミニカ育ちの彼らは、ドミニカ人と日本人、両方の性質をもっていて、とてもかわいらしい。
 日本に興味と愛着を持ちつつも、ドミニカも好きな子供たち。そんな子供たちが大きくなり、いつか日本とドミニカの架け橋になってくれれば、そのためのお手伝いを私が少しでもできれば、と願っている。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】埼玉県蓮田市
【年齢】二十七歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇

連載(46)=岡本真樹=トカンチンス日伯文化協会(トカンチンス州)=トカンチンスのスター?!

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連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間

連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」

連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット

連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?

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連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」

連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」

連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃

連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を

JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風

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