文協臨時評議員会=相場会長寄贈地を売却へ=「百年祭と会長別に」動議も

2006年8月9日付け

 ブラジル日本文化協会の臨時評議員会(評議員会長=大原毅)が五日、同会議室で開催され、サンロッケ市に所有する十万平米の土地を売却する承認、文協改革委員会の報告などが行われた。途中、「文協会長と百周年理事長は別の人物にすべき。それぞれ専念するぐらい重要な職務」との意見も出されるなど波乱含みの会議となった。
 当日は百五十人の評議員中、四十四人が出席、委任状が二十五人分、合計六十九人だった。冒頭、柳沼啓太郎、佐伯ジョルジ、田中福蔵三氏ら逝去者に黙祷が捧げられた。
 中心議題となったのは、サンパウロ市から五十数キロ離れたサンロッケ市に文協が所有する十面平米の土地の売却問題。八二年六月に、相場真一文協会長(当時)が寄付したもの。不動産評価額は十万レアル。
 関根隆範副会長は「遠隔地」「環境保存地区で土地活用が難しい」「土地なし農民の不法侵入を受ける恐れ」などを理由に理事会で売却を決議したことを説明。定款上、資産の売却には評議員会の承認が必要となる。
 「相場さんの名誉のために考え直したほうがいい」との異議が唱えられたが、「文協が必要とするなら売ってもいいと故人が言っていた」との証言も紹介された。
 さらにINSS問題に絡んで、約四百万レアルにも膨れた罰金の抵当に同土地が設定されており、現状では、正式な土地譲渡契約は結べない件も議論された。
 「正規譲渡は解決後との条文を入れて、売買契約を交わせば問題ない」との関根副会長の説明に対し、高田フェルナンド評議員は公的団体のモラルを取り上げ、「文協の場合、INSS問題を解決した後で売買すべき」との論陣を張ったが、多数決で承認された。
 杉尾憲一郎改革委員会副委員長から、三年前に改革委員会が理事会に提案した改革内容に関して、理事会がどの程度実際に実行したのかを審査した経過が、議事録形式で報告された。
 その他、定款改正委員会、財政再建委員会が五人ずつ指名され承認された。
 日伯二十一世紀協議会のメンバー、横田パウロ評議員は「この場に、若者が二~三人しかいないのは残念なこと」と全体の雰囲気に疑問を呈した。加えて「日本の日伯議員連盟は人事変更しブラジルへの興味を高めているが、ブラジル側には変化が見られない。今こそ文協からの働きかけが重要」との役割認識を示した。
 同協議会で、日伯両側でお互いを知るための情報が増えるべきとの提言が出されたことに触れ、「日本文化の普及や日本移民史編纂など、文協は今こそ書籍の出版に本気で取り組むべき」と提言した。

突然あがった動議

 終盤にさしかかった頃、赤嶺尚由評議員から動議が上がった。「百周年までたった二年しかない。今後を円滑に進行させるには思い切ったことが必要」と前置きし、「百周年理事長と文協会長は切り離してほしい」と言い切った。
 続けて「文協はそのまま上原幸啓会長に続投してもらい、百周年には日本の官民と対等に意思の疎通ができる人材をつけてほしい」と提案した。
 尾崎守評議委員も「一つだけでも十分に重責。上原さんは文協改革に専念してほしい」と語り、文協会長、百周年理事長、大学教授職と〃三足のわらじ〃を履く現状を問いただした。
 矢野敬崇評議員もマイクの前に立ち、「日本のブラジル関係者と話しても、今の文協は顔が見えないといわれる」との声を紹介。「もっと一世の声を聞く討論会を催してほしい」と要望した。
 中川デシオ評議員は「執行部の失敗とあげつらうのでなく、文協全体で取り組む姿勢を持つべき。誰かの足を引っ張るのでなく、全員で手を合わせて日系社会全体の問題解決をするべき」と執行部を弁護した。
 それ以上の議論はされず、赤嶺評議員も昼前に中座、上原会長は最後まで一言もコメントしなかった。
 最後に大原評議員会会長は「今日の会議は意義が深かった」と講評し、閉幕した。会議後、記者団に対して上原会長は「こういうことは慣れている」とし、直接反論するのを避けた。