たゆまず学ぶ=東京農大校友会員=シスコで持ち回り汎米大会=大学の最先端農場見学=ブラジルからも16人参加

ニッケイ新聞 2006年8月17日付け

 「大学多しといえども、私たちの母校のように、(海外の)校友会支部が回り持ちで大会を開いているところはないでしょう」と誇らしげに語るのは、東京農業大学ブラジル支部の沖真一さんだ。今年の第八回パンアメリカ・サンフランシスコ大会が、去る三日から三日間、同地で開催された。親睦を前面に出してはいるが、この大会では、喜寿になろうという校友会員が「学ぶ」のである。そして、情報交換する。今回もその実をあげた。ブラジルからは、妻同伴五組を含め十六人が参加、交流してきた。
 東京農業大学校友会は、日本および海外支部回り持ちで「校友会大会」を開いている。卒業生の多くが海外に出て永住し、事業展開している、同大学ならではの恒例行事だ。「卒業生が海外に出ている率」は、拓殖大学と双璧で高率だ。
 今回のサンフランシスコ大会には、アルゼンチン、ブラジル、パラグァイ、メキシコ、カナダ、コスタリカ、および日本から合わせて百四人が参加した。日本から大沢貫寿学長、戸神重美理事長、松田藤四郎校友会長ら六十四人、ゲストには山中誠在サンフランシスコ総領事らを招いた。
 三日間、日程はぎっしりつまっていた。《第一日》各国支部代表者会議、カクテルパーティ、夕食会、大会(大会宣言、物故者への黙祷、主催者あいさつ、来賓あいさつ、祝吟、鏡開き、会食、参加国別会員紹介)。《第二日》研修会(カリフォルニア大学サンタクルース校、農園見学)、サリーナス野菜栽培地帯視察、松井ナーセリー視察。《第三日》本会議(代表者会議報告、東京農業大学近況報告、質疑応答、基調講演、講演会。
 第二日は、勉強の日だった。UCSC(カリフォルニア大学サンタクルース校)ではCASFS(ザ・センター・フォア・アグロ・エコロジー&サスティンネブル・フード・システムス、農生態学・持続食糧システム・センター)を見学した。同校で初めて実践、研究、教科として確立された未来の「環境重視型農業学科」である。
 説明によれば、有機農業、永久持続農業、環境重視農業、地域協力農業は、個々には日本でも始まっているが、総合学問としてはまだである。
 システム・センターは、UCSCの構内の農業試験区八十アールと大学所有の十ヘクタールを使用した二つの農場に分かれていた。両農場はともに有機農法を使っての農業を実践し、各種試験研究、学生の教育、実習事業さらに大学関係研究者、教育担当者が利用出来るようになっていた。
 サリーナス野菜栽培地帯は州内モントレー湾から南へ百五十キロに及ぶ。湾の入り口付近は気候冷涼で洋菜栽培が盛ん、年間二・五回生産する。中央地帯は温度も高く、果菜類生産。南の丘陵地帯はワイン用ぶどう栽培が大規模に行われている。四十五フィートの大型保冷トラックで、運転者二人が各種野菜を、四日間昼夜走行し、ニューヨークへ運ぶという。
 ――東京農大校友会員も一九六〇年代初めの卒業生ともなれば、もう一線を離れている。しかし、校友会大会で「農業視察」に時間を割くのは生涯学習そのものだ。そのことが当然なのもこの大会の特徴だ。