ラーモス移住地に新名所=サンタ・カタリーナ=観光物産館「八角堂」=日本政府の草の根協力で

ニッケイ新聞 2006年8月17日付け

 ラーモス移住地に新名所――。南伯サンタ・カタリーナ州のラーモス移住地で進められてきた「多目的観光物産館(通称〃八角堂〃)建設プロジェクト」に、日本政府の草の根無償資金が出ることが決まった。地元農産物の販売や日本文化の紹介などを目的とした総合物産館で、建設費用は総額八万九千八百ドル。梨の栽培や「さくら公園」「平和の鐘公園」で知られる同移住地。新しい観光名所の誕生に、地元からも大きな期待が寄せられている。
 同プロジェクトはかねてからポルト・アレグレ領事駐在事務所(前ポルト・アレグレ総領事館)に申請されていたもの。八角堂のほか管理人棟、門とセルカが含まれる。全て日本建築風建物となっており、総額八万九千八百ドルの建設となる。八角堂は平屋だが、外観は二階建て風で、床面積は二百二十四平米。台所とお手洗いが併設されている。
 館内では農産物・農産加工品・手芸工芸品などが展示販売されるほか、各種講習会や講演会、日本文化紹介の展示など多目的に利用される。
 ラーモス移住地のあるフレイ・ロジェリオ市は人口が三千人弱で、その大半は中小規模農家であり近年の農業不振の影響をもっとも強く受けている。さらに未曾有の大セッカによる水不足も深刻で、営農危機に拍車を掛けているのが現状だ。
 こうした中、すでに「さくら公園」と「平和の鐘公園」の二つを抱える移住地に新たな観光拠点となる物産館が建設される運びとなったことに、市当局はもとより市民からも大きな期待が寄せられている。
 ラーモス移住地の近隣にはドイツ系、イタリア系、オーストリア系などの移住地が点在し、それぞれが自国の文化を売り物にした農村観光地として先んじている。そこで、ラーモス移住地を抱えるフレイ・ロジェリオ市も日本文化と梨・柿・桃・椎茸・アーリョなどを組み合わせた農村観光地を目指すこととなった。
 建設予定地は市の入り口であり、移住地とさくら公園の入り口でもあるマロンバス河を望む高台で、絶景の場所。
 移住地開設当初からの最大の悲願であった道路の舗装工事も橋脚工事を除いて完成目前。この時期に八角堂建設のゴーサインが出たことによって、地域の活性化と振興の起爆剤として大きな期待がかけられている。
 六日夜にラーモス日伯文化協会(本多文男会長)の会館でおこなわれた契約署名式には、本多会長、木村元ポルト・アレグレ領事、シーダ・コスタ州地域開発長官夫妻をはじめ、フレイ・ロジェリオ市からは市長・副市長両夫妻や市議会議員多数のほか地域のブラジル人や日系人が大勢出席して喜びを分かち合った。
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 この八角堂の青写真は、十年程前ポルト・アレグレに日本語指導教師として赴任した斎藤富貴子シニア・ボランティア夫妻が指導訪問したおりに、地元リーダーたちの熱い思いに共感してできたもの。夫君で一級建築士の斎藤健さんが置き土産したものだった。計画では「ラーモス日本村建設」とあって、八角堂のほか連棟式宿泊棟、団体宿泊棟、茶室、多目的和室などがコンピューター・グラフィクスで描かれている。
 草の根無償資金プロジェクトの書類作成をした文化協会総務の山本和憲さんは「十年ぶりに斎藤先生に電話して八角堂が陽の目を見そうだと伝えたら、手弁当ででも建築現場に立って監督したいとおっしゃってくださった。地球の反対側の、しかも山の中の小さな移住地のことをこんなにも気に掛けてくださるかたがいて感動です」と話した。
 同地では今月二十日に「第九回さくら祭り」を予定している。開催前の良い知らせ。今年の祭りは活気あふれる盛大なものになりそうだ。